いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

アニバーサリー

窪美澄の小説『アニバーサリー』を読了した。今日はそのことについて書いてみたいと思う。

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私の趣味のひとつは読書だ。常日頃からどこへ行くにも鞄に文庫本を忍ばせ、空き時間をみつけては読んでいる。

 

基本的に男性作家を好んで読む。ジャンルは所謂『純文学』が主食だ。若い頃は貪欲にいろんな作家を漁り読みしていたのだが、いつからか限られた好きな作家の作品ばかりを読むようになった。

 

しかし先日、ふと女性作家の小説が読みたくなった。それも『純文学』ではなく『大衆文学』の作品が読みたくなったのだ。

 

心境の変化があった明確な理由はわからない。

 

その前まで、長編の古典文学を読んでいた反動もあるのだろうし、もしかしたら、このブログを書き始めたことも影響しているかもしれない。

 

どちらにせよ、私は女性作家特有の気遣い溢れる繊細な文章が読みたくなったのだ。そして、本屋でたまたま新作が平積みされていたのを見つけ、窪美澄という作家の存在を思い出した。

 

これまでに私は彼女の作品を2冊読んだことがある。(『ふがいない僕は空を見た』と『よるのふくらみ』だ。)そういう意味では、私にとって数少ない“好きな女性作家”と言ってもよい存在だった。よし、久しぶりに彼女の本を読もう。そう思った。

 

読む作品も現在の心境に近いものを選ぶことにした。デビュー作『ふがいない僕は空を見た』は発売された当時に読んだのだが、それ以降、彼女はたくさんの作品を出していた。今ではしっかり人気作家の地位を築いているようだ。

 

私は文庫化されている作品の中から、出産や育児にまつわる話だという『アニバーサリー』を選択した。そして購入と共にさっそく読み始めた。

 

簡易な言葉のみで人の心をありありと描ききる筆力。透明感溢れる瑞々しい文体。あぁ、やっぱり私は、この作家の書く文章が好きだ。読みながらそんな充足感に包まれた。

 

マタニティスイミングスクールの講師をつとめる70代女性と、望まない子どもを授かった30代の女性をめぐる物語だった。

 

読んでいて、出産や子育てに携わる女性たちの苦労、心境が痛いほどに伝わってきた。読み進めていくうちに、妻と娘を一層大切にしたいという気持ちが、自然と沸き上がってきた。

 

そのようなことを口にすると、妻もこの小説に興味を持ちパラパラと読み進めていた。読書習慣のない彼女だが、なんとか最後まで読んでくれたら嬉しいのだけど。

 

一部、窪美澄の特徴でもある性に纏わる刺激的なシーンもあり、もしかしたら読む人を選ぶのかもしれないが、とてもよい読後感が得られる素敵な作品だった。

 

ちなみに私は、次も窪美澄の作品を読むつもりでいる。どうやら私の中で窪美澄ブームが到来してしまったようだ。

 

今日からは短編集『水やりはいつも深夜だけど』を読みはじめる。そのため既に通勤用バックの中には忍ばせ済みだ。その作品についても、読み終わったら感想を書きたいなと思う。

 

素敵な文章を読むのは楽しい。物語から共感や気づきを得られるのなら尚更だ。

 

将来娘にも、この楽しさを味わって貰えたら嬉しいな。お互いの感想を言い合えるような関係になれたら、この上なく幸せなんだけど。