いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

水やりはいつも深夜だけど

窪美澄の『水やりはいつも深夜だけど』を読了した。

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前回書いた『アニバーサリー』から2作続けて窪作品を読んだことになる。今回は短編集だ。こちらもとても読後感の良い素敵な作品だった。

 

人間関係が歪んでしまった6つの家族が登場する。妻や夫、娘、息子の立場から、それぞれの家庭におけるやるせなさと葛藤が語られていく。

 

相変わらず透明度の高い瑞々しい文章。平易な言葉のみで登場人物たちの心境をありありと描写している。

 

更に今作を読んで感じたのは、伝えたいメッセージを物語に落とし込む筆者の器用さだ。

 

これまで読んだ窪美澄作品には、まずは筆者に描きたい物語があり、その物語から自然と普遍的なメッセージが沁みだしてくる、といったような印象を受けていた。

 

しかし今作における6つの物語からは、まずは伝えたいメッセージがあり、それを効果的に読者に伝えるために物語を緻密に作り上げた、というような印象を受けた。

 

それほどまでに、筆者の家族に対するメッセージが、物語を通してストレートに伝わってくるのだ。

 

それでいて、とってつけたような先の読める物語にはなっておらず、独自の切り口、繊細な人物描写など、筆者の色もしっかりと残されている。


一つ一つの物語は短いながらも、登場する人物たちはありありと浮かび上がってくる。そして物語の構成も、暗闇の中に小さな明かりが点るように、希望の兆しとともに締めくくられるためとても後味が良い。

 

どんな絶望的な状況であっても、勇気を出して踏みだし行動に移すことで、少しずつでも良い方向へと状況を変えていける。

 

どんなに崩壊しつつある家族でも、遅すぎることはなく、いつからだってやり直すことができる。

 

そんな暖かくも力強いメッセージを、私はこの本から受け取る事ができた。

 

すっかり、窪美澄という作家に魅了されつつある。

 

勢いのまま、次も窪作品を読むことにした。今度はまた長編が読みたくなったので、彼女の代表作のひとつでもある『晴天の迷いクジラ』を購入した。

 

また、最近小説ばかりで、少し趣向の異なる本も読みたくなってしまった為、併せて辰濃和男著『文章の書き方』も購入した。

 

この本を読むことで、ここでの文章にも何かしらの変化がでたら良いなと思っている。

 

なにはともあれ、最近、本を読むのが前にも増して楽しい。

 

毎日ここで文章を書きアウトプットしていることで、インプットする喜びを感じやすくなっているのであろう。

 

小さな行動により人生が少しだけ豊かになる。

 

学んだばかりのメッセージが本当だということを、こんなところからも教えてもらえている。