辰濃和男著『文章の書き方』を読了した。
評価の高いロングセラー本ということで、とても期待して読んでみたのだが、その高い期待を裏切らない素晴らしい内容だった。
著者の辰濃氏は、むかし朝日新聞で『天声人語』を担当されていたジャーナリストらしい。
私は彼のことをこの本を読むまで知らなかった。しかし、その文章を読むだけで、彼の誠実な人柄と、文章へのなみなみならぬ想いを感じとることができた。
タイトルから、現世にはびこる“ハウツー本”のようなものを想像される方もおられそうだが、そうではなく、純粋なる読み物として十二分に愉しめる内容となっている。
本の冒頭にも書かれているとおり、著者は“文は心である”を信条にしている。
それに呼応するように、ここで書かれているすべての事柄は、突き詰めればその言葉へと収斂されていく。
本の構成としては大きく3つの章に分けられている。「素材の発見」、「文章の基本」、「表現の工夫」である。
更にそれぞれの章は6つの項目から成り立っており、優れた文章家たちの名文も適宜引用しながら、わかりやすく魅力的な文章で説明が掘り下げられていく。
「素材の発見」の章では「意欲」という項目における、胸からあふれるものを書くべし、という主張が心に残った。
「文章の基本」の章では「平明」という項目の、読む人に配慮されたわかりやすい文章こそがすべての基本となる、という考えに大いに納得をさせられた。
「表現の工夫」の章では「正確」という項目で、事実の記載はもちろんのこと、自分の気持ちや目に映るものにおいても、正確に書いてこそ文章に血が通うのだ、という意見がとても胸に響いた。
今後も、文章を書くときにはいつでも手の届く場所において、折に触れては読み返したいと思える本だった。
ちなみに、この本の姉妹本である『文章のみがき方』についても、昨日Amazonで注文した。そちらもすこぶる評判が良い本なので、今から読むのが楽しみである。
当然であるが、文章力は良い本を読んだからといって、一朝一夕で身につくものではない。
著者も言っていたように、とにかく毎日書き続けることでしか上達はできないのだ。
そういう意味では現在、毎日文章を書く習慣が身についたのは良い兆しであろう。今後もできる限り続けていきたいなと思う。
そしてしばらくして、昔の記事を読み返したときなどに、自分の文章力の向上を実感できれば嬉しく思う。
今回この本を読んで、やはり自分は文章を読み、書くことが、好きで好きで堪らないのだなと改めて思った。
お金もそんなにかからないし、文章力は仕事においても役立つので、悪くない趣味ではないだろうか。
あまり人にお勧めするつもりもないのだが、そんな趣味が、自分としてはとても気に入っている。