いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

休日の朝、ベッドにて。

足下でなにかが動く気配を感じた。

 

目を開けると、娘がもぞもぞと身体をくねらせ、ベッドによじ登ろうとしているところだった。

 

私は慌てて耳を塞いでいたヘッドフォンを外した。そして娘の身体を両手で支え、ベッドの上にあげてあげた。

 

娘は起きたばかりなのだろう、半分寝ぼけたような目で私を見つめている。

 

私は家族の中で誰よりも朝起きるのが早い。

 

平日は仕事があるのでもちろんそうだし、今日のような予定が決まっていない休日も、たいてい私が一番に目を覚ます。

 

今日はなんだか朝から音楽を聴きたい気分だった。おそらく寝る直前まで「音楽の日」のテレビ番組を見ていたからであろう。

 

私は寝ている妻と娘を起こさないよう、静かに寝室に移動した。ベッドで横になり、ヘッドフォンを耳に被せた。そして気分にあった音楽を再生し、目をつぶりその世界へとゆっくりと入っていった。

 

一枚のアルバムが終盤に近づいたころ、冒頭のシーンが訪れる。

 

気づけば足下にいた娘。きっと和室のふすまから廊下に出て、私を探しに来てくれたのであろう。

 

「ぱぱ、おあおう」

 

おはよう、と私も返した。頭を撫でながら表情を確認する。今日もいつも通り元気そうだ。

 

「パン食べる?」

 

「うんっ」

 

「牛乳飲む?」

 

「うんっ」

 

「行こっか?」

 

「うん!」

 

笑顔でベッドを降り、リビングへと向かおうとする娘。私もそれを追うためヘッドフォンをしまおうとする。

 

ケースにいれるのに少し手間取っていると、娘が廊下から振り返り、私の方を見つめている。

 

「行くから、少し待ってて」

 

焦らすような娘の視線、コードはなかなかうまいこと纏まってくれない。

 

リビングに着いたら、まずはお茶を飲ませ、スティックパンと牛乳を食べさせよう。もしかしらたヨーグルトも欲しがるかもしれないな。

 

朝ご飯を食べ終わったら、ママを起こして、服を着替えて、それから・・・。

 

頭の中では次々とイメージが広がっていく。

 

休日の朝に湧き上がるわくわく感は、何度味わっても筆舌に尽くしがたい。

 

しかし、急げば急ぐほどに手元はくるい、もたついてしまうのだった。

 

ねぇ、まだぁ?娘が視線でそう訴えてくる。

 

さぁ、早く行かなければ。娘が待っている。

 

もたもたしてても、休日は待ってくれない。