いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

乙女心

いつものように家族3人でお風呂に入っていた。

 

涼しくなってきてからというもの、娘は以前にも増してお風呂に浸かるのが好きになったようだ。

 

昨日も娘の身体を洗おうと浴槽から持ち上げようとしたとき、もっとお湯に浸かっていたかったのだろうか、「だめっ」と言って私の手から逃れようとした。

 

少し話が横道に逸れてしまうのだが、娘の「だめっ」や「いやっ」は、なかなかに色っぽい。

 

含みを持たせた流し目に口には微笑みを浮かべ、こちらを試すような口ぶりで言うのだ。この歳にして、峰不二子のポテンシャルを秘めているように思う。

 

そんな言われ方で抵抗されてしまうと、私はうまく対抗できなくなる。昨日のお風呂においてもそんな状態となった。すると、そんな私に見かねた妻がこんなことを言ったのである。

 

「あ~○○ちゃん、早くパパに洗ってもらわないと。身体きったな~い」

 

するとどうだろう。娘は一瞬「えっ」という表情になり、とたんに泣き出してしまったのだ。

 

娘は「きたない」という言葉を理解できる。よく色んなものを口に入れようとするので「きたない」といって制してきたのだ。つまり娘は「きたない」ものは悪いもの、という認識を持っていると思う。

 

そしてこの時は、自分の身体が「きたない」と言われたものだから、娘は悲しくなったのだろう。小さな乙女心が傷ついてしまったのだと思う。

 

私は泣いた娘を抱きかかえ、いそいで身体を洗ってあげた。洗い終わると妻が「○○ちゃん、きれいになったね~」と言い、そこでやっと娘に笑顔が戻った。

 

それにしても「きたない」と言われて泣いてしまうなんて、やっぱり小さくても娘は女の子なんだなと思った。男の子なら笑いとばしてしまいそうだ。

 

娘のそんな乙女な一面が見られて、私はほんわかした気持ちになった。思わせぶりな態度、コロコロ変わる表情、いつまで見ていても飽きる気がしない。

 

そんなふうにして昨夜も、私の小さな峰不二子ちゃんはとんでもないものを盗んでいくのであった。そう、私の心を。