いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

おままごと

「はい、ど~じょ」

 

娘がプラスチックのお皿に色とりどりのボールを入れ、私の方へと差し出してきた。私はありがとうと言い、それらを食べる真似をする。

 

おいしい、ごちそうさま。笑顔でそう言いお皿を返すと、娘は満足そうな微笑みを浮かべ、自分のキッチンへと帰っていく。

 

しばらくすると、次は片手にポットもう片方にはコップを手に娘がやってきた。そして目の前でポットからコップに何かを注ぎ、「ど~じょ」と私に手渡してくる。

 

私はそれをゴクゴクと言いながら飲んだ。「おかわり」と言うと、彼女は「はいはい、よく飲むわねぇ」というような表情を浮かべポットを傾ける。再びコップを受け取ると、私はそれを一気に飲み干してみせた。

 

*****

 

娘は先日、誕生日プレゼントで母方のばぁばから手作りのキッチン台をもらった。手先が器用でセンス溢れるばぁばは、これまでにも様々なものを作り贈ってくれていた。その中でもこのキッチン台は大作のひとつだ。

 

そのキッチン台が届いて以来、娘は折に触れて上記のような“食事”を私たちに振る舞ってくれるようになった。

 

私がいないときは、ぬいぐるみたちにご飯を食べさせているらしい。想像するだけで、その可愛らしい情景が目に浮かぶようだ。

 

昨日においては、夕食後と就寝前の2度、長い時間にわたって娘はおままごとをしていた。

 

就寝前の方では、布団で横になる私の手をひっぱり既に電気が消されたリビングへと連れて行くと、何度も繰り返しドリンクを振る舞ってくれた。

 

私が「おいしい」や「ありがとう」と言うと、娘は絵に描いたようなハニカミ顔を浮かべる。私はその顔が堪らなく好きだ。どことなく、料理を褒めたときに妻が浮かべる顔と似ているような気がする。

 

やっぱり女の子は小さいうちから“母性”というものを持っているのだろう。だって世話をやいたり面倒をみるという習性を、こんなにも早く身につけているのだから。

 

それか、娘は妻の振る舞いを真似しているのかもしれない。そういう意味では、そのような姿を見せてくれている妻にも改めて感謝したい気持ちになる。

 

さて、今晩は何が出てくるだろう。私は2人の愛する女性から食事を振舞われる贅沢なご身分だ。

 

妻が作ってくれる夕食も、娘が振る舞ってくれる食事も、今から楽しみでしょうがない。