スカートをなびかせ、娘が笑顔でやってきた。
「かーいー?」
おもむろに、首をかたむけながら言う娘。
「うん、かわいいよ」
そう応えると、娘は一層その目を輝かせた。
「かがみ!」
「鏡で見る?」
「うん!」
嬉しそうに駆けだした娘についていく。姿見の前に立った娘は、そこに映る自分の姿を覗き込んだ。口には相変わらず深い笑みが張り付いている。
娘は姿見から少し離れ、全身を鏡に映した。くるりと身体をひねらせて、後ろ姿までも確認する。おそらく妻が鏡の前でそうするのを見て覚えたのだろう。
「かーいー」
丹念に自身を確認した上で、娘は改めてそう呟いた。うん、かわいいよ、と私も改めて同調する。
昨日、妻が衣替えの整理をしてくれていた。このところ急に冷え込んできたからだ。娘は作業をする妻に近づいていき、畳まれ積まれていく洋服たちを興味津々に眺めていた。
そんな娘に、妻はいくつかの服を着させはじめた。最近ママ友からもらった服や、実家から持ってきた妻の子ども時代の洋服が、今シーズン娘に着させられるかどうかを確かめる為だ。
初めて見る洋服たちに娘の目は輝いていた。なかなか服を着させてくれないこともあるのだが、このときばかりは大人しく袖に腕を通してくれていた。
ひとつ、ふたつと、いろんな服を着せていくたびに、娘は冒頭に書いたような行動をとった。
いきなりはじまったファッションショーにはしゃぐ娘。新しい服を買ったときの妻と重なって見えた。
女の子ってほんと新しい服着るのが好きだよな。姿見で後ろ姿まで確認したことなんて自分はあったっけ?
昨日はそんなことを思いながら、楽しそうな娘の姿を微笑ましく見守っていた。
今日はお気に入りの服を着させ、どこに行こうかな。