いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

美容院に行った妻

昨日妻が美容院に行った。その間、私と娘は家でお留守番をしていた。


数時間後、そろそろお会計だという連絡が来たので、私と娘は美容院近くのパン屋へと向かった。そこで妻と待ち合わせ、一緒に昼食をとる約束をしていたのだ。

 

店内に着くと、すでに妻が席を確保してくれていた。妻の新しい髪型は、サイドにウェーブがかかっており、まずはそこに目がいった。

 

はにかみ顔を浮かべる妻。髪型の感想を言ってほしいのだろう。私はそんなとき、うまいお世辞や気の利いたコメントというものができない。

 

いや、やろうと思えばきっとできるのだろうが、妻相手に心にもない取り繕った発言はしたくない、というのが正直なところだ。

 

とはいえ、これまであまりにも無配慮な発言をして、妻を傷つけてしまったこともあるので、そうはならないよう発言には気をつけようと思った。

 

今朝までとの違いで言えば、サイドへと流れる前髪がつくられている。またサイドにあてられたパーマも、いつもより細かい波形を描いていた。全体的にシルエットが洗練され、サイドにボリュームがついたことで、顔がより小さくなったように感じられた。

 

「うん、良い感じだよ」

 

とりあえず私は無難な感想を口にした。妻は若干の物足りなさと疑いの感情を滲ませながらも、まずは肯定的な発言がでたことに安堵を抱いたようだ。私たちは食事をとることにした。

 

昼食を済ませた後、私たちは河原をサイクリングし、数駅先のニトリへと行ってぶらぶらと家具を眺めた。

 

その間、妻の髪型にもすっかり目が慣れてきた。すると、おろしたての秋服コーデとの相性の良さも相まって、その髪型のもつ魅力が、より多く目につくようになっていった。

 

会話の途中、妻がこちらを振り向くたびに、私は思わず「あ、可愛い」と口にした。会話の流れぶった切りで、思ったことを口にしてしまういつもの悪いクセだ。

 

妻は呆れ顔を向けつつも、若干の照れと、隠しきれない嬉しさを滲ませていた。きっと妻にとっても、今回の髪型はなかなかのお気に入りなのだろう。

 

何度かそれを繰り返していくうちに「当然でしょ、私を誰だと思っているの」という、楽しい返しが返ってくるようになった。ノリの良い掛け合いから、たくさんの笑顔が生まれた。

 

妻がご機嫌なお出かけは例外なく楽しくなる。きっかけをつくってくれた、腕の良い美容師さんには感謝だ。