いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

お家づくり

最近、娘はお家づくりをする。

 

段ボールや積み上がった布団、床に敷く用のプレイマット等を組み合わせ、自分が入れるくらいの大きさで屋根と囲いを作るのだ。


ここのところ、引越しへと向け家の中に段ボールが積み重なっている為、彼女の家を作る材料や状態が溢れている。そんな中で彼女が見つけた遊びのひとつだった。


彼女はお家を作り上げると、すっぽりと身を収め、最後にドアを取り付ける。少しだけドアを開き覗き込むと、娘は嬉しそうにちょこんと座っている。


「○○ちゃん、おうち、つくった」


その家のつくりが立派であるほど、彼女は誇らしい表情を浮かべる。そしてその家に満足しているときほど、私たちをご招待してくれるのであった。


「ぱぱ、はいって」


彼女は自身の前にあるスペースを指差す。私の素敵なお家に是非とも遊びにいらして。彼女の目はそのようなどこか上品な輝きを帯びている。


私はそのご招待を有り難く拝受する。小さすぎて入れない場合は、寝そべって顔だけお邪魔させてもらうのだ。


「はい、どうぞ」


彼女は私が入ろうとすると、自身の体を奥の方へと詰め、少しでも入るスペースを広げようとしてくれる。そして、狭くてごめんなさいねぇ、と照れくさそうに微笑むのであった。


なんとか上半身が入りきると、背中に被せるようにドアを閉める。暗くて狭い空間の中で、私と娘は向かい合い、笑顔を交わす。


いい家だね、と伝えるとわかりやすく嬉しそうにする。「ここ、とんねる」娘はお家の中の案内を始める。畳まれた段ボールが重なってできた壁には隙間があり、トンネルのように向こうまでその穴が続いていた。


少し暗いから電気を持ってきてあげるね、私は一度お家から出て、電池式のミニスタンドライトを持ってきた。中でつけると仄かに空間が明るくなる。それに合わせ、娘の表情も明度を上げた。


来週新しいお家に引っ越したら、君だけのお部屋があるんだよ。それを知ったら君はどんな顔をするだろう。


自分でコーディネートするのはしばらく先だろうけど、君の作る部屋が今から楽しみで仕方ない。