娘はよく得意げになる。私に性格が似ているのだ。
昨日もお絵描きを褒めているときに、そんな娘がひょっこりと顔をだした。
「えっ、すごい!これ描いたの?」
「うん、これぜんぶ、○○ちゃん、かいたの」
娘は“得意げモード”になると、嬉しさを抑えようとポーカーフェイスになる。しかし、その昂揚はなかなか抑えきれないようで、少し饒舌になり喋りには抑揚がつく。
「これ、ちょーちょ、なの」
見れば、いびつな楕円がふたつ触れ合うように並んでいた。たしかに言われてみれば蝶々に見えなくもない。
「すごいね、ほんとに蝶々だ!」
「ちょーちょ、かいたの。これは、あんぱんまん」
大きな丸の中に小さな丸がふたつ描かれていた。アンパンマンの輪郭とほっぺのつもりなのだろう。
娘の頬はほんのりと紅くなり、喋りながらに「むふ~」と鼻息が漏れだしていた。どんどんと、その興奮度が上がってきているようだ。
その後も、娘は自分の描いたものを次々と紹介してくれた。勢い余ってか、パパが描いたものまで得意げに話してくれたのが面白かった。
娘の長口上は更に続き、近くにいたママにまで説明に行っていた。せっかくのポーカーフェイスなのに、これでは褒められて舞い上がっているのがバレバレだ。
褒めがいがあるよなぁ。そんな娘を見つめながら、私は目を細めた。
それにしても、娘は本当にお絵描きが上手になった。
まだ一目見てわかるレベルには達していないが、説明を受ければそれとわかることが多い。
なにより、ただデタラメに幾何学模様を描くだけではなく、何かを描こうとして描いているというのが、以前と比べての大きな進歩だ。
これはもしかすると、才能があるのではないか?
将来はアーティストになるかもしれない。そしたら、早いうちからお絵描きにふれあわせた私たちの功績では?
なんて。娘よりも得意げになっている、親バカひとり。