昨日は月曜にしては珍しく定時で帰った。ボーナス支給日のため残業の自粛日だったのだ。
スーパーでポカリを買い、家に帰った。娘の風邪はだいぶ良くなったようで、前日よりも更に元気そうだった。
「ぱぱ、あ~しょ~ぼ!」
夕食後にいつものお誘いがあった。そう言って、娘は私を寝室へと連れ出すのだ。
私はこうやって誘われるたび、なんだか小学生の夏休みのような懐かしさを感じてしまう。遊ぶことがすべてだった、あの時代に戻ったかのような。
寝室のベッドでじゃれ合い、ぬいぐるみも交えて遊んだ。しばらくすると、リビングへと戻り、そこで娘はパズルで遊びだした。私はテレビ番組を見ながら、キッチンに立つ妻と会話を交わしていた。
少しすると、娘が再び廊下へと消えていった。数秒後に「ぱぱ~、ぱぱ~」という少し篭った声が発せられる。
私はSOSかなと思い、急いで寝室へと向かった。しかし、まっくらな寝室には娘の姿がない。呼びかけても娘からの反応は皆無だった。
私は若干の不安に駆られながら、寝室にあるウォークインクローゼットの扉を開けた。中には娘が立っていた。顔にはイタズラっこの笑顔を携えている。
私は彼女を抱きかかえ、「隠れるの上手いねぇ」と彼女を褒めた。娘は嬉しそうに微笑み、それが隠れんぼ開始の合図となった。
私がリビングに戻りしばらく過ごしていると、再び「ぱぱ~」という声が聞こえた。私は「○○ちゃ~ん、ど~こ~」と言いながらゆっくりと近づいていく。
寝室に入ったが娘がいない。あたりを見渡すと、ベッドのかけ布団がもっこりと膨らんでいるのを発見した。
私は「あれ~いないな~」などと言いながら、娘を探しつづけた。すると可笑しさに堪えきれなくなったのか、娘がクスクスと笑い出した。
「あれ、声がするぞ、こっちかな」と言い布団へと近づいていくと、「きゃはは」という、もはや決定的な声がこぼれた。
私はいきおいよく布団を引っぺがす。娘は両手をあげて「じゃじゃ~ん」と中から登場した。顔には満面の笑みを浮かべている。
そんなふうに、隠れんぼはその後も何回か続いた。それ以降は布団にばっかり隠れていたので、もはや隠れんぼとは呼べないかもしれないけれど。
「あ〜そ〜ぼ!」
何十年か経って、そんな言葉を聞いたとしたら。
そのときは小学生の夏休みじゃなくて、こんな日々のことを懐かしく思い出すのかもしれない。