いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

ビデオ通話

妻と娘が帰省して以来、毎日のようにビデオ通話をしている。

 

昨日も寝る前にかけてきてくれた。映像がうつると、いつも娘が正面からこちらを見つめている。私の姿を確認すると「むふ~」と息を漏らし、わかりやすく嬉しそうにしてくれる。喜びを感じる瞬間だ。

 

会話がはじまると「ぱぱ、ぱぱ」と矢継ぎ早に今日あった出来事を報告してくれる。彼女の言葉は、可愛らしい擬音や自分のセリフが随所に織り込まれ、聞いていて面白い。持ちうる語彙でせいいっぱい伝えようとしてくれているのがわかる。

 

あらかた喋り終わると、娘は画面越しに自分のオモチャを見たいと言い出した。「みにおん」「ぶろっく」「ばいきんまん、あいすくりーむ」などなど、具体的な指示が飛ぶ。私はひとつひとつカメラに映してあげた。

 

「懐かしいでしょ?」私が聞くと、果たして本当に意味がわかっているのか、「なつかし~」と感慨深そうにつぶやいていた。その後はひとつ見せるたびにそう口にし、いっぱしの哀愁を漂わせていた。

 

そんな感じでやりとりをしているうちに、私はLINEビデオ通話におけるエフェクト機能を見つけた。以前流行ったアプリ『SNOW』のように、リアルタイムに顔加工ができるものだ。

 

試しに使ってみると、向こう側で妻と娘が喜んだ。さっそく妻も使い始め、双方で愉快な顔のやりとりをした。犬になったり、涙を流したり、サイヤ人になったり。

 

ただ、最初は娘も楽しんでいたのだが、自分の顔にエフェクトがつくと実際の顔に張り付いたのだと思ったようで、「とれない、とれない」と何度も顔をこすってエフェクトを振り払おうとしていた。

 

しまいには不安に駆られたのか「とれな~い」と泣き出す始末。エフェクトではない本物の涙が娘の頬をつたった。さすがに可哀想なので、エフェクト機能で遊ぶのはそれでお終いになった。

 

その後、私がお風呂に入るので通話を切ることに。別れ際にはいつも娘が「だいすきよ」といいながら、向こう側でスマホをぎゅっと抱きしめてくれる。カメラが娘の胸に塞がれるので、つかのま画面が真っ暗になる。

 

そして私が喜ぶので、娘は画面越しにちゅーもしてくれる。私も同じようにやりかえす。ポップアップに自分のキス顔が映ってしまうので、その部分はあまり見ないよう気をつけながら。

 

最後は娘が赤い電話マークを押して通話終了。ドロンという音の後には、ひときわ深い静寂が訪れる。

 

毎回、少しだけ、この瞬間が苦手だ。