いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

結婚指輪と薬指

昨日は、結婚指輪を付けずに会社に行った。

 

基本的にいつも指輪をしている私だが、ワックスで髪を整える際には毎回外している。昨日はそのときに外したまま、洗面所に置き忘れてしまったのだ。

 

会社に向かう電車の中でそのことに気がつくと、急にそわそわした気持ちになった。いつも身につけているものがないと、なんだか落ち着かないものだ。

 

私は身につける装飾品は、結婚指輪と時計だけと決めている。というか、理系のくせに『ファッションの足し算・引き算』を理解できていない私が、それ以上のものに手をつけるのはたいへん危険なのだ。

 

ただその代わり、唯一身につけているその2つに対しては、自分なりの愛着をもっている。高価なものではないのだが、心底気に入ったものを選んでいる。

 

まずは時計だが、現在はハミルトンの手巻き時計を使っている。ベルトはレザーに換え、仕事でもプライベートでも使えるようにした。飽きのこないシンプルな顔立ちが気に入っている。

 

2日に1回ネジを巻いてあげないといけないという、程よい手のかかり具合にも愛着を覚える。そんなに高価でもないので娘にも気軽に渡せるし、そのくせミリタリー仕様で傷も付きづらく、どこへでも連れて行けるのだ。

 

次に、結婚指輪だ。ヴァンクリのシンプルなリングを身につけている。そもそもブランドにも疎い私だが、大学時代にオシャレな友人の影響で香水を齧った期間があり、そのときにヴァンクリの存在を知っていた。

 

結婚指輪を選ぶ際、妻にとっても憧れのブランドだということがわかり、ここのリングを選んだ。装飾はなく、ただただ美しい曲線で丸みを帯びている。指によくなじむし、さりげない存在感が気に入っている。

 

さて、昨日はそんな結婚指輪を付け忘れて一日を過ごした。普段は気がつかなかったが、私は薬指の指輪を親指で撫でるというクセがあるようだ。ふいにそのクセがでてしまい、そのたびに指輪がないことにハッとした。

 

家に帰ると、その旨を知らせていた妻が娘の届かない場所へと指輪を移してくれていた。すっぽりと指へはめ、ようやく落ち着きを取り戻す。なんだかんだ、私を支えてくれている存在なのだろう。

 

さて、ここからは少し話が変わる。そんな昨夜、小さなトラブルが起きたのだ。自分への戒めも込め、ここにも書き記しておきたい。

 

というのも、娘の指をイスの背と壁の間に挟んでしまう事故を起こしてしまったのだ。幸い、私の体重が乗り切る前に娘が泣き叫んでくれたので大事には至らなかったが、娘には恐くて痛い思いをさせてしまった。

 

か細い娘の指だ。一歩間違えれば骨が折れたり、それ以上の事態になっていた可能性もある。私の不注意が最たる原因なので、十分に反省し、今後の戒めにしたい。

 

ちなみに、そのはさまった指は左手の薬指だった。将来、結婚指輪をつけるであろう、大切な大切な指だ。

 

私は改めて、傷や痣を残すことにならずよかったと思った。きっと彼女も将来、その指にはめたリングを眺め、時に撫で、その度に勇気をもらうようになるのだろう。

 

そうなることを願いつつ。そして、それがまだまだ遠い将来であることをひっそりと祈りつつ。私は無意識のうちに、薬指のリングを撫でていることに気づいた。