いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

みみずくは黄昏に飛びたつ

『みみずくは黄昏に飛びたつ』を再読した。

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少女時代からの熱心な愛読者である川上未映子芥川賞作家)が訊き手となり、村上春樹にロングインタビューした模様が収められている。

 

2017年に発売された本だが、かれこれ読み返すのは3度目だ。それほどまでに二人の会話は面白く、文章を書く上で学べるものも多い。今回はこの本で言及されている『騎士団長殺し』をやっと読み終わったので、改めて本書を読み返してみることにした。

 

終始、川上未映子の質問力が冴えている。長年、村上作品を読み続けたファンとして、文章を武器に戦う同じ作家として。敬愛の念から発せられる質問や、興味本意の質問、はたまた鋭すぎて村上がたじろぐ質問まで。とにかく、これまでにない濃いインタビューになっている。

 

巻末での村上本人の後書きにも書かれているが、村上も終始楽しかったようだ(退屈する余裕もなかった、と語られている)。その雰囲気は本書を読んでいる端々で、私たちも感じることができる。

 

本書では、村上が自分自身でも物語の最後がわからないままに作品を書き進めていること、物語よりも文章自体を進化させていくことを重要視していること、など。これまでも他の場所で語られていた内容が、これまで以上に詳細まで具体的に語られている。

 

中でも私は、村上の文章に対する揺るぎない向上心に惹かれた。自身が書く上で気をつけていること、拘りなどが表現豊かに語られており、読む度に心引き締まる。

 

とにかく読者が簡単に読み飛ばせるような文章を書いてはいけない

 

そして彼の作品を読んでいると、まさにそのことが有言実行されていることがわかるのだ。それゆえに、これ以上ないほどに、そこに説得力が纏われるのであった。

 

また内容を忘れかけた頃に読み返そうと思う。読む度に、何か文章を書きたくなってしまう、そんな良書だ。