いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

だめだしょ

お風呂場に移っても、おままごとが継続していた。

 

「だ~めだしょ!」

 

私は娘に叱られる。お風呂場に持ち込んだプラスチックのお皿には、お湯という名のご飯が盛られていたのであろう。私がそれを溢してしまったものだから、娘は怒っている。人差し指を立て、くどくどと説教をはじめた。

 

「わかったぁ?ごめんさいは?」

 

これは妻の真似だ。今や完全に習得しており、一日に何度かはこの言葉を浴びせられる。無理に低い声色をだし、目を細めアゴをツンとあげ、厳粛な雰囲気を出そうとする、そんな娘の言い草が可愛くて大好きだ。

 

私は娘に叱られたいが為に悪さをする事も多い。「ここでまっててね」と言われたのに動いたり、「あけないで」と言われたのに目の前で開けたり。

 

そんなとき娘は、どこか嬉しそうに声を荒げ、「だめだしょ」と叱る。ちなみにこれは「だめだよ」と「だめでしょ」が混ざってできた言葉のようだ。

 

また娘は、妻から以前叱られたことをもちだし、私に向けて叱ることもある。「そこはくるまくるから、こっちあるくの」と言って歩道を歩いたり、「ぴっとしたら、ここでまってるの」と言ってエレベーターの扉から距離をとったり。そのたび私はお礼を言って娘に従う。

 

私は娘にとって、パパであり、弟なのだろう。学校とかに行き出したら、世話焼きの学級委員にでもなりそうな性格である。優しく見守りたいな。将来が楽しみだ。

 

ちなみに、娘に叱られて喜んでる私に、妻は「癖(へき)だ」と言って白い目を向けてくる。

 

しかし、そんなわけはないのだ。これはおままごとであり、謂わば躾の一環なのである。たぶん。