いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

螢・納屋を焼く・その他の短編

村上春樹の初期の短編集『螢・納屋を焼く・その他の短編』を読了した。
f:id:pto6:20190520074914j:image
収録作のひとつ『納屋を焼く』が韓国で映画化されたらしく、最近本屋で平積みされていた。そういえば読んでいないな、と思い購入。これまではその“寄せ集め感”が漂うタイトルから、読むのを後回しにしていたのだ。

 

読んでみると流石は村上春樹、どの話も面白かった。初期の作品は学生時代に読んで以来、最近では久しく読んでいなかったので、そのリリシズム溢れる、いわゆる“文学然”とした筆致が、なんだか懐かしく思えた。

 

そう思うと、最近の村上の文章や物語の描き方は、だいぶマイルドになったんだなぁ、と感じさせられた。

 

5つの収録作の中でも、後の大ヒット作『ノルウェイの森』の原型となった『螢』、読み手をハッとさせる終わり方の『納屋を焼く』、ホラー的描写が新鮮な『踊る子人』が、私の印象に残った。

 

特に『納屋を焼く』は、いくつもの解釈ができる描かれ方をされているので、読み終えてからネットに溢れる考察記事を楽しく読んだ。この作品をどうやって映画化したのか、とても興味が湧いた。

 

村上作品は長編を読むと、やっぱり長編だよなぁと思うし、短編を読めば、短編も上手いなぁと思い、エッセイを読めば、実はこれが一番かもなぁ、と思ってしまう。

 

結局のところ、武器となり得る自身の文体さえ持ち合わせていれば、何を書いても人に読ませられるのだろう。

 

いよいよ村上作品で未読なものも少なくなってきた。大切に読もう。そして、次なる新作も楽しみにしている。