いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

毒味役

ランチのデザートを食べているときだった。

 

「ぱぱ、これたべて」

 

私は娘の指示に従い、フルーツゼリーに入った桃をスプーンでひとかけら口へと運んだ。しばし咀嚼し、「美味しいよ」と感想を伝える。

 

それを聞くと娘は、満足げに頷いた後、踏み切るような色合いを目に宿らせ、大きく口を開いた。

 

「○○ちゃんも、たべたーい」 

 

ゼリーの桃は最近食べた記憶がなかった。そのため、まずは私に毒味をさせたのであろう。基本的にやんちゃな性格の娘だが、端々ではこのように“石橋を叩く”傾向がある。おそらく、両親の血を受け継いだのであろう。

 

思えば、食べ物以外でも私はよく“毒味役”をさせられる。はじめて見たモノを掴まされたり、危なげなところを渡らされたり。まぁ、私としては娘にケガをしてほしくないので、慎重に行動してくれて嬉しいのだけど。

 

これからも、上様のお達しとあらば毒味役でもなんでもさせていただく所存だし、言われなくても、草履くらいは懐で暖めてあげるつもりだ。

 

お姫さま、仰せのままに、なんなりと。