いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

箱入り娘

娘は段ボール箱に入るのが好きだ。

 

昨夜も、物置部屋で大きな空き箱を見つけると、それに入って遊び始めた。言っても離れないので、仕方なくその箱をリビングの方へと運んであげた。物置部屋だと物が多くて危ないからだ。

 

リビングでも、娘は引き続き箱に入っては出て、入っては出てを繰り返していた。時に私にも入ってみるよう要求し(身体が大きくて蓋が閉まらなかった)、時にミッキーの人形と共に潜り込み、私たちに蓋を閉めさせた。

 

娘の身体の半分ほど高さのある箱だったので、出入りは安定性に欠いた。なんどか箱ごと倒れ、見ていてひやひやとさせられた。それでも箱を支えてあげたり、足場をつくってあげたりして、娘の遊びをサポートしていた。

 

次に娘は箱を横に倒し、犬小屋のような形態にして中に入った。そこからひょっこり顔を出すので、私はオモチャの食材を与えた。察しの良い娘は“餌をもらう犬”になりきって、わんわんと甘えるような声をだしていた。

 

娘を見ていて、段ボール箱ひとつでもいろいろと遊べるもんだなぁと感心した。最近お風呂場ではラムネの空き容器で長々と遊んでいるし、子供にかかれば、なんでもオモチャにすることができるのだろう。

 

こんな日焼けした子が『箱入り娘』なんて、てんで可笑しな話だとは思うけど、今この瞬間だけは文句なしで『箱入り』だよなぁと、娘を眺めながらに思った。

 

その『箱入り』という言葉はふいに、将来娘が結婚するときのことを私に連想させた。はたして、私は彼女の結婚をちゃんと祝福することができるのだろうか。

 

そのとき、箱から顔を出した娘が、にぃっと笑った。

 

きっと、こんなふうに娘が笑っていさえすれば、心から祝福してあげられるはずだ。そんなふうに思った。