いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

高い窓

レイモンド・チャンドラーの『高い窓』を読了した。
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私がチャンドラー作品を読むのはこれで5冊目となる。いつも期待通りの満足感が得られるので、チャンドラー小説は私にとってはもはや鉄板だ。今回は夏の帰省のお供で連れて行き、帰りの新幹線の中で読み終えた。

 

彼の作品はいつ読んでも文章を読む喜びを与えてくれる。私立探偵マーロウが主人公となる毎度おなじみのハードボイルド・ミステリーなのだが、正直なところ、話の内容は何が書かれていても全く問題にはならない。

 

巻末の訳者解説にて村上春樹もこう書いているほどだ。

そこにチャンドラー独特の魅力的な文体があり、そしてマーロウという人物がマーロウらしく動いている限り、我々は基本的に何の文句もなくその作品を楽しむことができる。

 

まさにその通りだと思う。クールでタフな主人公マーロウと、それを生き生きと描く軽妙洒脱なチャンドラーの文章。それだけあれば、たとえ同じ話を何度繰り返されようとも、飽きることなく読み続けられるだろう。

 

現に、マーロウシリーズ第三弾となる本作は、その地味な物語展開から今ひとつの評価と知名度に留まっているようなのだが、私はその他の作品たちと比べても、一切の遜色も見いだすことができなかった。

 

また、本作は彼の作品の中では“プロットの破綻”が少ない作品として知られているらしいのだが、それについても私はあまり実感を持つことができなかった。いかに内容ではなく文章ばかりを追って読んでいるのやら。

 

この作品でも各章にひとつは、思わずなぞり書きしたくなるほど秀逸な表現や比喩を見つけることができた。とにかく文章好きには堪らない名文の宝庫となっている。

 

村上春樹ポール・オースターカズオ・イシグロレイモンド・チャンドラー。これがここ数年間私の中で不動の大好きな作家“四天王”であるが、ここに来てチャンドラーが首ひとつリードしてきたような気がする。

 

今誰かに「一番好きな作家は誰ですか?」と質問されたら、間違いなくチャンドラーだと応えることだろう。

 

さて、そんな愛するチャンドラー作品も、未読のものは残り2作となってしまった。一旦は昔読んだ作品を再読しながら、一気に読み切らないよう調整していきたい。