いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

ゆで卵の殻むき

娘はゆで卵の殻むきができる。

 

昨日も食卓に座って隣同士で殻むきをしていた。器にトントントンと卵をぶつけ、ヒビの入ったところから殻を剥がし始める。彼女の作業は繊細で丁寧だ。

 

一方私はバリバリと殻を剥がす。いかに大きな塊のままで殻を剥がすかをテーマとしており、かぽっと大物が取れたときには幾ばくかの快感を味わっていた。

 

しかし、そんな私のむいた殻を見て、娘が言う。

 

「もうちょとちっちゃくしなきゃ、だめだしょ!」

 

どうやら彼女は殻を細かく砕くことにこそ美徳を感じているらしい。方向性の違いというやつだ。ただ、私はそれも気にせず自分のやり方で殻をむき続けた。すると娘は眉間にシワを寄せ、低い声を絞り出すように言った。

 

「もう、ちゃんとして!おによぶよ!」

 

私は大人しく言うことを聞いた。鬼を呼ばれたくないから、というわけではないのだが、私たちが使う“最上級の脅し文句”を真似してきた、その気持ちを汲んであげようと思ったのだ。

 

私が殻を小さく砕くと、娘はそれでいいんだ、とばかりに鼻息を吹かした。色々と拘りを持ち始めたみたいだ。