いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

あのさぁ

「ぱぱ、あのさぁ、きて、きて!」

 

最近そうやって娘が私のことをよく手招きする。駆け出す娘の後をついて行くと、たいていはささやかな困りごとの共有だったりする。

 

「ほら、これ、〇〇ちゃん、むっかしいの」

 

私としては「あのさぁ」がツボだ。まだ使いこなせる語彙も少ないうちに、よくもまぁ、このような意味を持たない間投詞の使い方を身につけたものだなと思う。

 

また他にも「こんなかんじ」というように、ニュアンスを伝える言葉も最近は使うようになっており、それにも関心をさせられた。少し前までは、娘がどんどんと名詞や動詞を覚えていく姿に感動を覚えていたのものだが、なんだか次のステップに進んだような印象を持った。

 

それにしても、日本語というのは面白い。「あのさぁ」が間に入るだけで、だいぶ肌感覚が変わってくる。

 

「ぱぱ、きて、きて!」
「ぱぱ、あのさぁ、きて、きて!」

 

どうだろう。字面を見ただけでも、そこに含まれる親しみを感じないだろうか。また、のんびりとした牧歌的な響きも感じ取れ、間の抜けた滑稽さも少し滲み出ている。このように書き起こすうちにも、目を真ん丸にした娘の顔が浮かんできて、思わず口元が緩んでしまった。

 

きっと小説を書く人たちは、台詞にこのようなエッセンスを加えながら、登場人物たちのキャラをつくっていくんだろう。娘に教えてもらったような気持ちになった。