いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

馬とご主人様

人は褒められたら嬉しいものだ。


それが例え自分が馬で、相手が幼い娘であってもだ。昨日お馬さんごっこをしていて、そのことを確認できた。


娘に言われるままに、私は四つん這いになり、更に身を低くした。娘を背に乗せるためだ。娘の体勢が整うと私は歩み始めた。娘は寝室を指差したので、私は冷たくて堅い廊下に前足をつけながら、指示通りに歩を進めた。


寝室に入り、そこにあったマットレスに手をかけたときにはほっとした。娘の体重が増えてきたことで、手や膝に感じる痛みも日々大きくなっている。娘は私の背中から飛び降り、意気揚々とベッドへとよじ登った。


私が膝を崩して座っていると、娘は微笑みを携えて私の方に振り返った。なんだろうと思ってみていると、娘は手を伸ばして、私の頭を優しく撫でたのであった。


「よしよし、いいこだねぇ」


まさに愛馬にかけてあげるような優しい労いの言葉だった。その瞳には慈しみの念が浮かび、その声には朗らかな温かみがあった。馬扱いされているというのに、私はご主人様の愛に触れ、幸せな感情に包まれた。


私はとても嬉しかった。そしてまた、娘に褒められるよう、頑張って馬になろうと心に決めた。それにしても、娘はいったいどこでこの掌握術を習得したのだろうか。