いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

ミーミとジャービ

可愛いことに、娘は自分の両手に名前をつけている。

 

右手がミーミ。左手はジャービ。手を人形にみたてて遊んでいた頃に命名され、以来娘はたまにその呼び名を口にする。漫画『寄生獣』の“ミギー”みたいだ。

 

いきなり「ジャービがぁ」と話し始めるので、最初はわけがわからなかったものだ。ただ最近では、会話の中で彼らが登場するのを私はひそかに楽しみにしている。

 

昨夜はベッドの中での会話に登場した。

 

私が「どっちがジャービだっけ?」と訊ねると、娘は嬉しそうに紹介してくれた。「可愛いね」と言うと、どこか得意げに両手を広げ、「うん、とってもかわいいの」と言い、ふたりをせわしなく動かしていた。

 

娘は私の左手を指さし、「パパのひだりては、なんてなまえ?」と訊いてきた。突然の問いかけに私はうーんと唸ったが、すぐに頭に浮かんできた名前を口にした。

 

フィッツジェラルド
「えー、それだいすきじゃない」
「じゃあ、ヘミングウェイ
「それもすきくなーい!」
「じゃオースター」
「やだー」

 

私が愛する文筆家たちの名前は、どうやらお気に召さなかったらしい。その後、娘を寝かせるためにその会話を終わらせたのだが、今改めて考えている。自分の両手に名前をつけるとしたら、どんな名前がいいかなあ、と。