いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

ぐぅぐぅっぺ

「ぱぱ、ぐぅぐぅっぺ」

 

娘は最近うがいを覚えた。覚えて以来、思い出しては、うがいをしたいとお願いしてくる。

 

そのため『外から帰ってきたとき』と『歯磨きをしたあと』だけに限り、うがいをさせている。

 

うがいといっても、水を口に含み、ただ吐き出すだけだ。うがいとしての効能はほとんどないだろう。

 

それに、たまに吐き出さず水を飲んでしまうこともある。もっと言うと、吐き出し方が下手で、服がびしょびしょになることも。

 

とにかく、まだ覚えたてで練習中なのだ。

 

昨夜も娘はうがいをしたがった。「ぐぅぐぅっぺ」と言い、私の手を引き洗面所へと連れて行かせようとする。

 

「ぐぅぐぅっぺは、歯磨きをしてからでしょ?」

 

私がそう言うと、娘は頷いてリビングへと駆け出した。

 

「まま、(歯磨)きー!」

 

そう、娘はうがいをしたいが為に歯磨きをしてくれるのだ。なんともありがたい。私は妻と協力しながら、寝転ぶ娘の歯磨きをすませた。

 

歯磨きが終わると、娘は再び洗面所へと行きたがった。今度はなにも断る理由はない。手を繋ぎ娘と一緒に洗面所へと向かった。

 

「い、ち、ご」

 

娘用の踏み台に上らせ、洗面台の前に立たせると、娘はまず『いちご味の歯磨き粉チューブ』を指さした。

 

娘用に買った歯磨き粉で、妻曰くフッ素入り(だったかな?)なので、歯磨きが終わった後に指で歯に塗ってあげている。

 

そしてそれが終わったら遂に「ぐぅぐぅっぺ」だ。

 

パジャマをぬらさないよう、娘の首下によだれかけの要領でタオルを巻いた。そして水の入ったコップを娘へと手渡す。

 

娘は嬉々としてコップに口をつけた。そして勢い余って少しだけ水を飲んでいた。(あーあ、歯磨き粉が・・・)

 

その後は、口に水を含んでは吐き出す、の繰り返しだ。

 

私は水を吐き出す毎に一回一回娘を褒めた。褒められると、娘はとても嬉しそうに微笑む。そして、次はもっと上手く吐き出そうと、なんだか張り切ってくれるのだ。

 

10回くらいそれを続け、コップの水がなくなったところで娘にはおしまいを告げた。そして抱っこして踏み台から降ろしてあげた。

 

「ぱぱ、ぐぅぐぅっぺ」

 

娘はまだ物足りなかったようだ。しかしこれ以上はキリがない。

 

「ぐぅぐぅっぺはまた明日ね」

 

「い、ち、ご」

 

「い、ち、ごは歯磨きした後でしょ?」

 

しまった、と思った。

 

しかし、時既に遅し。その言葉を聞くと娘はリビングの方へと駆けだしていた。

 

「まま、(歯磨)きー!」

 

そんな毎晩を過ごしている。『うがいブーム』のおかげで、娘の歯はぴかぴかの真っ白だ。