いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

大雨で水に流れたもの

今日は年休を取っていた。家族で四国に行く予定だったのだ。

 

しかも、妻のご両親をお誘いしての“還暦お祝い旅行”。

 

それが残念なことに、この大雨で水に流れてしまった。

 

昨日からダイヤが乱れる情報をキャッチし不安視していたのだが、本当に旅行に行けない自体になることまでは正直予想していなかった。

 

朝起きた時点で、大阪から四国へと向かう新幹線も、ご両親が九州から向かう路線も、どちらも運行を見合わせていた。

 

しかし、私たちは僅かな希望に賭け、大雨の中、新大阪駅に向かった。

 

というよりも、旅行代理店の営業時間(AM10時~)はまだ始まっておらず、キャンセルしようにも、手段がなかったのである。(直接宿にも電話してみたが、旅行代理店に確認して下さいの一点張りだった・・・)

 

身体と荷物を濡らしながら、娘だけは雨から守り、なんとか新大阪駅まで到着した。予想はしていたが、新幹線の改札前にはすごい人だかりができていた。

 

相変わらず新幹線の運行は見合わせている。どうやらご両親側も同じ状況らしく、博多駅まで到着したが、そこから先は足止めを食らっていた。

 

旅行代理店の営業時間はまだ始まらない。こんな事態が起きた時くらい、臨時で店を開けてくれてもいいのになと、半ば八つ当たりともいえる感情を抱いてしまう。

 

手持ちぶさたなので、やれることをするしかない。四国で予約していたレンタカー会社に電話してみる。すると親切なことに、この状況を汲んでキャンセル料はいりません、と言ってくれた。とてもありがたく思った。

 

その後、ついに旅行代理店の営業時間が始まった。すぐに店舗に電話をかける。

 

事情を伝えると、店員はのんきな様子で、一般的な場合におけるキャンセル料の決まりを告げた。おそらく現在の交通状況を理解できていないのであろう。

 

「我々が申し込んでいるプラン内容と、今の交通状況を鑑みた上での具体的な指示と説明をください。」

 

店員とのあまりの温度差に、思わず口調が厳しくなってしまう。電話先にもそのトゲが伝わったのであろう。すぐに確認し折り返し電話をさせてほしいと申し出てきた。

 

電話を一度きり、妻に状況を共有する。さきほど店員が説明した一般的な場合におけるキャンセルだと、旅行費は半分も戻ってこないだろう。

 

では、運転再開を待って新幹線に乗り込むか。構内アナウンスによると、もう少しで岡山までの新幹線なら運行を再開する見込みらしい。

 

しかしそれに乗れたとしても、岡山から四国までの運行が再開する保証はない。それにご両親がいる九州側の再開見込みも未だ立っていなかった。

 

そんな状況で私たちだけが中途半端に駒を進めると、後戻りできなくなるリスクが伴う。

 

なにより、記録的大雨が降りそそぐ危険な状況の四国に、娘を、家族を、連れて行ってよいわけがない。

 

この状況であれば、費用が返金され、旅行自体をキャンセルできることが、一番理想的な展開だと思った。

 

そのとき、旅行代理店から折り返しの電話がきた。私は急いで電話に出る。そして息を飲んで店員の説明に耳を澄ませた。

 

JR四国に確認したところ、全額返金できるそうです。」

 

肩の力が抜けるのを感じた。なんとか不幸中の幸いを拾うことができたのだ。

 

今回旅行に行けなかったのは残念だが、お金が返ってくるのなら、再計画も気持ちよく立てることができるだろう。

 

その後、私は長い行列に並び、チケットに「運転見合わせ」の証明印を押してもらった。そしてその足で旅行代理店に向かい、旅行代金の返金処理までを済ませてもらった。

 

現在は家に帰り着いたのだが、いまだに雨は降り注いでいる。

 

ネット情報によると、まだ新幹線は止まっているらしい。旅行自体をキャンセルできて、本当によかった。

 

妻と娘は疲れたのだろう、布団で仲良く寝息を立てている。私もこれを書き上げたら、隣で横になろうと思う。

 

今回は運が悪かった。でも家族が安全で、お金も返ってきたわけだし、最悪というわけでもないだろう。

 

旅行計画にかけた労力と小銭は戻ってこないけど、“梅雨の時期に旅行することのリスク”を学べた勉強代だと思う他ないだろう。

 

少しだけもやもやする気持ちは残るが、それすらも水に流すことにしよう。