いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

すばらしい日々

よしもとばななのエッセイ「すばらしい日々」を読了。

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先日、本屋で物色しているときにふいにエッセイが読みたくなって、その後ネットで購入した本だった。

 

よしもとばななを選んだのは、先日読んだ「文章の書き方」という本の中で紹介された文章に惹かれたからだ。その中で彼女は、文章を書くことがもはや身体に染みついている人、というような紹介をされていた。

 

よしもとばななの作品を読むのは、大学生以来だと思う。これまでには「キッチン」と「デッドエンドの思い出」という小説2作品しか読んでこなかった。どちらのストーリーも全く覚えていないのだが、特に後者はとても良い読後感を得たことだけは覚えている。

 

さて、そんなわけで初めてよしもとばななのエッセイを読んだのだが、これがすごく良かった。

 

文体が自然で読みやすいし、人柄がにじみ出た独特の暖かみを感じた。

 

文章を読んでいるだけで、しゃべったこともないのに、よしもとばなな本人の声で語りかけられているかのように感じられた。

 

小さい頃から当たり前のように文章を書き、作家になり数え切れないくらいの作品を執筆し、仕事以外でも日記ブログを書くなど、とにかく書くことが生きていく中での一部となっている彼女。

 

完全に“自分の文体”を習得している人の文章には、このような味と深みがでるんだな、ということを改めて実感させてくれた。

 

長年連れ添った愛犬が亡くなり、震災が起き、闘病の末に両親と親友が相次いで亡くなった頃に書かれたという本エッセイ。

 

もっと全体的に暗くて重い雰囲気の文章を想像して読み始めたのだが、じめじめしたところはいっさいなく、どの話も軽やかに語られている。

 

日々のささやかな一コマを抜き出し、彼女の視点で淡々と描かれていく。そのなかには、心掴まれる暖かな表現がいくつもあって、読んでいると身体の芯からぽかぽかしてくるような気持ちになる。

 

そうか、私はこんな文章が書きたかったんだなと、すばらしい模範回答がふいに目の前に提示されたような気持ちになった。

 

小さな鞄にもすっと忍ばせられるほどの薄さで、文字も大きく1話ごとに写真も挿入されている。読書が苦手な人にとってもさらりと読み通せる本ではないだろうか。

 

私も妻におすすめした。1話1話はとても短いので、生活の中で少しずつ読み進めてもらえたら嬉しく思う。

 

私も今読んでいる別の本を読み終えたら、またよしもとばななの本を読みたいと思っている。なにせ作品数は多いので、選ぶ作業も楽しみだ。

 

いい本に出会えると人生が豊かになった気持ちになる。この本もそんな豊かさを与えてくれるいい本だ。