いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

無限すべり台

天気が良く、公園日和だった。

 

朝起きてすぐ、カーテンから入る光に娘が「きょうは、いいてんきよ」と予言した、そのとおりの天気だった。

 

日差しは明るく、気温はポカポカと暖かい。青空も澄み渡っていて、春の到来を感じさせられた。

 

妻が美容室に行っている間、公園に娘を連れて行った。まずはしばらく砂場で遊んでいたのだが、その後は遊具エリアに移り、多くの子供達に混じって遊びはじめた。

 

そして、その中のひとつの遊具に娘が夢中になった。それは螺旋階段のように踏み場が組まれており、その頂上からは真っ直ぐにすべり台が地面に伸びている。

 

娘は踏み場を一段ずつ、両手両足を駆使してよじ登り、頂上まで到達すると、すべり台の淵を両手で掴みながら勢いよく滑り降りた。

 

少し前までは登るのも補助がいったし、すべり台も高さがあるので手を添えてあげる必要があった。しかし、いつのまにか一連の工程を、自分ひとりでできるようになっていたのだ。

 

私はすべり台を滑り終わると「ひとりでできた、すごいね」と彼女を褒めた。娘もそのことが嬉しかったようで、むふーっと鼻息を吹き鳴らしながら、ふたたび遊具の方へと駆けていった。

 

その後、私も彼女の後に続いてすべり台を滑るよう指示され、それに従った。しかしそこからがエンドレスだった。本当に、いつ終わるのかわからない、恐怖のループが始まったのである。

 

1ループが終わる度、娘はこの言葉を繰り返した。

 

「もういっかい、しゅー、するー」

「いっしょ、いこ」

「おいで、ぱぱ」

 

正直、5回くらい繰り返したところで、私は足に疲労感を感じた。全身をつかってよじ登っている娘からしたら尚更疲れているだろう。それなのに、彼女は疲れをおくびにも出さず、楽しそうに登り降りを繰り返していた。

 

結局は20回ほど繰り返しただろうか。最後はよその子が娘の前を横切り、その子が来た方向に気を逸らされ娘が駆けだしたことで、そのループが解かれた。

 

あの子が横切らなかったら、もしかしたらまだ今も、すべり台を滑り続けていたのかも。救世主には感謝だ。