いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

大きくなる

おおきくなったの、と娘が言った。

 

お風呂上がりに、身体を拭いてあげている時のことだ。まだ浴室にいる妻が私に向かって、今夜は娘が夕食をたくさん食べた、という話をしていた。

 

私は唐突な娘の発言に、一瞬だけ頭に「?」を浮かべたのだが、すぐさまその言葉の意味を理解した。

 

私たちは娘に対し「ご飯をたくさん食べて、大きくなろうね」と常々言っている。娘の中では「たくさん食べること=大きくなること」なのだ。

 

そのため「おおきくなったの」という娘の発言は「たくさんたべたの」ということと同意だ。私たちがあまりに言うものだから、ご飯をたくさん食べた瞬間に身体が大きくなっている、と娘は理解しているのだろう。キノコを食べたマリオが、その場で大きくなるみたいに。

 

私は笑顔を浮かべ、娘の頭をやさしく撫でた。大きくなって偉いね、そう言うと、娘は得意げに顎をつきだしていた。パジャマを着終わった彼女は、置かれた踏み台によじ上り、私はドライヤーで彼女の髪を乾かし始めた。

 

このときは言わなかったが、おおきくなったの、と娘が発言をする際には「だから、こんど、とーますのろうね」という言葉が続いて出ることが多い。

 

これは以前テーマパークに行った際に、身長制限によりアトラクションに乗れなかったことに起因する。ご飯をいっぱい食べて大きくなったら乗れるようになるよ、そう娘に言って聞かせていたのだ。

 

彼女は健気にも、そのときの言いつけを信じ、ご飯をたくさん食べ、大きくなったら憧れのトーマスに乗ろうと、夢みて頑張っているのだろう。

 

たしか記憶によれば、トーマスに乗れなかったのはまた別の理由だった気もするのだが、娘がやる気になってくれているので結果オーライだろう。

 

あと2ヶ月もすれば娘も3歳だ。年齢制限という意味では、ぐっと乗れるアトラクションが増えるだろう。あとは身長制限。娘は平均よりとても小さいので、これからも頑張って、もりもりご飯を食べる必要がある。

 

なんにせよ、夢に向かって前向きに頑張る娘に、微笑ましい感情が芽生えた。次になにか乗れるアトラクションがあれば、ご褒美で乗せてあげよう。そして、頑張って大きくなったからだよ、そう言って褒めてあげよう。