私はそれを大型スクリーンの前で観戦していた。先週に引き続き、てんしばのファンゾーンに行っていたのだ。
午前中は会場に隣接したボーネルンドの施設で娘を遊ばせていた。しかし試合開始の1時間以上前から会場に長蛇の列ができはじめたので、我々もその列へと並んだ。
会場に入ると先週とは明らかに人数が違い、入り口の近くまで観客が溢れていた。私たちは観戦できるスペースを探しながらふらふらと歩き回っていたが、なかなか見つからず、結局スクリーンの目の前まで来てしまった。しかし運良くそこにぽっかりと空いたスペースを見つけ、私たちはとても良い席で観戦できることになった。
試合中は娘が遊び疲れから膝の上で寝てくれて、私と妻は集中して試合を観ることができた。前半の手に汗握る攻防、後半の大逆転劇、終盤の祈るような耐え忍び。
この後世に語り継がれるであろう名勝負をリアルタイムで、大画面の目の前で、熱狂的なファン達と一緒に観られたことを、心から嬉しく思った。
しかし、そんな私とは比べものにならないほど、幸福感に包まれていただろう身近な男を、私は知っている。
私の父だ。父はこの試合を静岡の会場で生観戦していたのである。大学時代には自身もラグビーをやり、今でもこのスポーツを愛している父。そんな父が自国開催であるW杯の日本戦を、生で観戦できるというだけでも嬉しかっただろうに、それがなんと、これほどまでの歴史的名試合になるなんて。
私と妻は観戦しながら、試合がどんどんとドラマチックな趣きを帯びていくたびに、父のことを思いだし、「喜んでるだろうね」「興奮してるよきっと」と自分たちのことのように喜んでいた。
父について静岡に行った母(チケットは1枚だったので、母は会場近くのファンゾーンで観戦した)からは、試合後に興奮に満ちた長文のLINEが届いた。母も同じように、父の心境を思い遣り、とても嬉しそうだった。
それにしても本当に昨夜は興奮させられた。まさに一生に一度の試合を観た、そんな感動に包まれていた。
是非ともこのままの勢いで勝ち抜き、目標の8強を、願わくばそれ以上を達成して欲しい。頑張れ日本代表!