いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

花より

コスモスが咲く万博公園に家族で行った。

 

花が見える芝生の上にシートを敷き、私たちは遅めの昼食を食べ始めた。大人はテイクアウトのケンタッキー、娘はベーカリーで買ったパンだ。

 

私は花に背を向ける形で肉にむしゃぶりついていた。花より団子。団子よりチキンだ。自分の分を早々に食べ終わると、美しい花々がやっと私の視界に入った。

 

娘はパンを食べ終わると、いそいそと靴を履いてシートから飛びだしていった。花と花の間の盛り上がった土の部分を歩いて行く。朝方の雨のせいで土は濡れており、娘の靴はあっというまに泥だらけになった。

 

花畑を一回りすると、次に娘は草原の方へと駆けていった。草むらではぴょんぴょんとバッタが跳ね、彼女は怖がっているくせに、なぜだか私にそれを捕まえるよう指示を出すのであった。言われた通りに捕まえて娘の前に持って行くと、「こわ~い」と言って顔を背けた。そんな娘の奔放さに付き合うのが、なんだか楽しかった。

 

次に娘は、背丈より大きい岩を見つけ上に登りたがった。抱っこしてそれに乗せてあげる。娘は岩の上にぺたんと太ももをつけ、がっしりと岩のでっぱりを掴んでいた。気持ちの良い風が吹いて、彼女の前髪を揺らす。「たっか~い」。娘は興奮した表情を浮かべていた。


もはや私たちは花のことなんて見ていなかった。花よりバッタ。花より大岩だ。妻だけがシートでゆったりと横になり、大好きなコスモスたちの観賞をしていた。銘々が好きなことをする、穏やかな時間が過ぎていった。

 

娘が昼寝に入ってからは、妻としばらく公園内を散策した。久しぶりに太陽の塔の後ろ側を拝んだのだが、その背中は相変わらず雄々しく、堂々としていた。
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それにしても、花の印象がまったく残っていない。