いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

Meltykiss

Meltykissという魅惑のキューブをご存じだろうか。

 

冬季限定のチョコレート菓子だ。ガッキーが長年CMを務めており、それを見かけるたびに「ああ、今年もそんな季節か」と冬を噛みしめてしまう。

 

そしてこの商品を宣伝するガッキーを見るたびに思う。「ガッキー、君は今年もそんなに可愛いのかい」と。
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そんなわけで、今年も冬がやってきた。冷蔵庫を開けると、妻が誘惑に負けて買ってきたというMeltykissが置かれていた。その控えめなサイズの上品な箱が、いっそうこのお菓子の価値を引き立てているように思われる。

 

夕食後、妻が暖かい紅茶を入れ、ひとり2粒ずつを持って食卓に座った。ぴりっと小袋をあけると、表面に茶色の雪がまぶされた、かぐわしい立方体が姿を現す。

 

私はその雪を落とさないよう注意しながら口へと運ぶ。

 

口内に入ると表面の雪は溶け、ひと噛みすると、まろやかな甘みが広がる。なんともしなやかな絶妙なる噛み心地だ。生チョコのようでもあるが、噛む喜びはしっかりと味わわせてくれる。芳醇な香りが鼻を抜けていく。

 

またたくまに一粒を食べ終えてしまった。歯に残る残滓が後引く余韻を扇情し、舌の上のひだたちは総立ちで、「アンコール」の大合唱は鳴り止まない。私はすぐにふた袋目へと手を伸ばした。

 

ふたくち目もその破壊力は留まることをしらない。口に入れた瞬間、口内に満ちた期待値をやすやすと上回る幸せが包みこむ。脳裏にはガッキーの笑顔が浮かぶ。隣にいる妻の幸せそうな顔がそれに重なる。ここが冬の桃源郷。世界平和の鍵は、きっとこの場所に眠っている。

 

私はとろけるくちづけを喰らい、その甘美な余韻に酔いしれていた。紅茶との相性も抜群だ。私はどこまでも続く甘みのらせん階段を駆け上がり続けていた。息はいっこうに切れない。まだまだ昇り続けることができる。

 

私はおもむろに席を立った。そして妻に向かって言う。

 

「もう一個ずつ・・・食べようか」

 

それに頷く妻の柔和な表情といったら。冬よ、永遠に。