いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

久しぶりの産婦人科

昨日は時間休をとり、妻の産婦人科に付き添った。

 

久しぶりにそこに漂う独特の雰囲気を味わう。空気の底には幸福な期待感が堆積している。ただその上に不安や緊張といった相反する層が薄く覆い被さっていることで、粛然とした、少し張り詰めた空気が流れている。

 

訪れる女性たちは、皆が皆、薄い膜のようなものを纏い、互いに干渉しないよう努めているかのようだ。誰とも目線を合わさずに、俯き気味でひっそりとその場に佇み、ただただ自分の名が呼ばれるときを待っている。

 

その慎ましく抑制された、深遠なる姿を見るたびに、全ての女性に備わっているのであろう偉大さを痛感させられるのであった。自分は場違いな存在であると重々自覚をした上で、待合所の隅の方で娘と一緒に座っていた。

 

長い待ち時間の後、ついに妻が呼ばれ診察室へと入っていった。ついて行きたがる娘を抑え、ふたたび静かなる時を過ごして待つ。しばらくすると妻が資料を手に戻ってきた。「どうだった?」。「うん、心臓、動いてた」

 

安堵感と喜びが全身にやさしく広がっていく。約一年前はこの段階まで辿り着くも、残念ながら、鼓動を確認することができなかったのだ。

 

会計を済ませ、クリニックを後にする。線路沿いを歩きながら、改めて妻と娘と声を出して喜びを分かち合った。カフェで軽食を食べ、その後私は仕事に向かうため、彼女たちとはそこで別れた。

 

夕食後には実家にテレビ電話をした。娘から発表してもらうと、画面の向こうでは両親が手を叩き、満面の笑みを見せてくれた。改めて、嬉しい実感が身を包んだ。

 

妻のお腹で鼓動を打ち始めたふたりめの我が子。大切に、大切に、育んでいきたい。心からそう思っている。