いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

おっきいお友達

「いっしょにあそぼ」と、娘が声をかけた。

 

相手のふたりが笑う。しかし、すぐに「いいよ」と言ってしゃがみ込み、目線を娘に合わせてくれた。

 

公園で初対面の人に声をかけ、一緒に遊んでもらうのはもはや娘の恒例行事だ。ただ、昨日娘が声をかけた相手というのが、高校生のカップルだったのである。

 

場所は公園内にある開けた空き地。立体駐車の2階部にあたる場所なのだが、今は使われておらず、コンクリート敷きの広大なスペースがひっそりと解放されている。

 

遊具エリアが混み合っていた為、私と娘は逃げるようにその場所を訪れていた。いつもは誰もいない。ただ昨日は先客がいた。それが高校生カップルだったのである。

 

彼らはブレイブボードに乗って遊んでいた。どうやら彼氏が彼女に乗り方を教えているところのようだった。私は、いつもなら貸切で使える空き地に先客がいたことに少しがっかりはしつつも、彼らの邪魔をしないよう娘に言い聞かせながら、その場所で遊びはじめた。

 

彼らの方も、私たちに気をつかって空き地の奥の方へと移動してくれた。なにせ空き地は広い。普通に遊んでいれば、これでお互い干渉しなくて済みそうだった。

 

ただ、そこは“社交性オバケ”の娘。もってきたストライダーに乗り、ぐいぐいと彼らに近寄っていった。

 

彼らの方もそれに気づいたようで、ちらちらと娘を見ながら笑顔を送ってくれていた。どうやら迷惑には感じていないようだ。その様子を見て手応えを感じたのか、ついに娘が彼らに声をかけた。それが冒頭の場面である。

 

その後、彼らは優しく娘と一緒に遊んでくれた。彼女、彼氏の順番で、ストライダーに乗った娘と短距離競争をしてくれたり、彼らの持ってきたブレイブボードに、ふたりで両側から支え乗せてくれたりもした。

 

その間、私も彼らと世間話をした。彼らは高校2年生のカップルで、今は学校が休校のため暇を持て余しているらしい。彼女の方は子供の頃からこの公園の近くに住んでおり、この空き地にもよく遊びに来ていたようだ。

 

ふたりともとても爽やかな若者で、話していて快かった。自分が高校生の時、こんなふうに愛想良く見知らぬ大人と会話ができただろうか。最近の若者は素敵だなあ。そんなふうに自分の認識を改めることができた。

 

中でも彼女の方がとても子供好きのようで、終始娘と仲良く、上手に遊んでくれた。数十分くらい遊んだところで、さすがにこれ以上デートの邪魔をしてはなるまいと、私は娘を連れて退散することにした。ふたりは何度も娘に手を振ってくれて、娘もそれに振り返していた。

 

将来娘も彼女のような素敵な高校生になってほしいと思った。同じ公園で遊んでいるのだから、なれるはずだ。