いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

ブッチャーズ・クロッシング

ジョン・ウィリアムズの2作目にあたる著書『ブッチャーズ・クロッシング』を読了した。
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私の愛読書『ストーナー』の著者による作品だ。その世界的ベストセラーにより日本でも二冊目が翻訳された。

 

一級品の文学作品である。なんと完成された物語だろう。私は今後何度でもこの作品を読み返すに違いない。

 

4人の男達が、前人未踏の秘境の地にバッファロー狩りに赴くという話だ。馴染みの浅いテーマだったが、物語の冒頭からその世界観に没入させられた。

 

狩りの営みを通して若い主人公は、大自然の偉大さと恐怖、生きることに通底する漠然性に気づかされていく。

 

緻密な文章が終始物語を牽引する。なんて凄い文筆家だろう。このような実力のある作家が、近年まで発見されなかったという事実に驚いてしまう。死後再評価され、このように日本でも出版されたことを有り難く思った。

 

巧みな描写のおかげで、文章をなぞった瞬間に映像が脳裏に浮かぶ。映像ばかりか、匂いや触覚、温度や味までもが我が身のこととして体感できるかのようだ。

 

これまで読んだ作品のなかで、こんなにも情景描写の効果を実感できた作品があっただろうか。

 

ただ文章において間を設けるためだけではなく、そこに世界を立ち上がらせるためにある描写だ。それがこんなにもうまく機能している作品を、私は他に知らない。

 

物語のテンポもよく、途中からはページを捲る手が止まらなくなった。一度本を閉じても、気がつけばまたすぐに手に取り、読み進めてしまうのだった。

 

これは余談だが、本書を読んでいる間、モンスターハンター(狩猟ゲーム)で遊んでいたので、世界観がリンクして楽しかった。ついついモンスターを狩る手にも力が入り、野性味溢れるその冒険に心を躍らされた。

 

この作者は生涯3作しか遺していない(正確には4作だが、デビュー作は作家自身が認めていないようだ)。おそらく残り1作も同じ出版社が翻訳してくれるだろうと期待している。発売されたら迷わずに購入する予定だ。