いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

身長を伸ばすためだけの手段

娘の身長が伸びているようだ。

 

リビングの柱には、目安となるようマスキングテープを貼っている。ご飯を食べ終わると娘はしばしばその前に立ち、頭の上に手を置いてと私たちにせがんでくる。昨夜は、遂にそのテープの上にまで手がかかった。

 

娘はそのことがとても嬉しかったようだ。お風呂に入ったときも話を持ち出し、これで遊園地で乗れるね、と歓喜の声を上げていた。USJにおける子供向けライドの身長制限を目安としてあのテープが貼られているからだ。

 

私はそうだねと娘に同調を示した。正確にはあともう少しだけ必要なのだが、USJに次行ける頃には、きっとそれくらい伸びているに違いない。私の同意を確認すると、娘は次にこんなことを言い放った。

 

「じゃあ、もうごはんたべないね!」

 

思わず笑ってしまった。娘にとって『食事』とは、遊園地でライドに乗れる高さにまで身長を伸ばすための手段でしかなかったわけだ。私はすぐに訂正をいれる。

 

「だめだよ、パパやママくらい大きくならなきゃ」
「えー、でも、ぱぱみたいにはなれないよ...」
「それはそうか、じゃあママをめざそう」

 

すると娘はふたたび「えー」ともらした。しかししばし考えるような表情を浮かべ、その後にこう口にした。

 

「でも、ままみたいに、おけしょうしたーい」

 

3歳児でも、娘の心は既に乙女のようだ。