森見登美彦の『太陽と乙女』を読了した。
森見のエッセイ集だ。これまでに書いたほとんどのエッセイがかき集められており、雑多な文章をカテゴリに分けて収録されている。
彼特有の茶目っ気溢れる文章で伸び伸びと書かれているように読めるのだが、本人曰く、小説よりもエッセイを書く方が苦手なのだそうだ。
小説は堂々と嘘が書けるし、それなのにどんどんと自分のことがわかってくる。一方で、エッセイは実際のことを書いているのに、書けば書くほど自分の事がわからなくなってくるそうだ。
本当に想像力が豊かで、小説を書くのに向いている人なのだろう。小説の方もなかなか苦労して書いているようだが、ゆっくりでいいので、これからも面白い小説を生み出し続けて欲しい。
著者も書いているが、この本は一気に読むべき代物ではない。何気ない時間にページをめくり、ちびちびと読み進めるのがよいだろう。私も通勤電車の中で長い期間で少しずつ読んだ。
章によっては退屈なところもあったが、全体的には満足感が得られた。やはり彼の書く文章は彼にしかない味わいがあり読んでいて楽しい。
特に文章や小説について書かれた章が読んでいて面白かった。なかなかユニークな小説の書き方をしているようだが、そのような執筆方法があのような奇想天外な物語を生み出しているのかと思うと、妙に納得させられたのであった。
彼の本はまた手にとるだろう。再び森見ワールドに浸れる日が来るのを楽しみにしている。