いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

カルタ

娘がカルタをできるようになった。

 

ついに平仮名を習得したのだ。妻からカルタのやり方を教わったようで、私に勝負を挑んできた。カルタは以前ばあばからプレゼントでもらったものを持っていた。

 

あまりに枚数が多いと難しいので、10枚ほどの絵札と読み札のセットをつくる。その作業すら娘は自分でできるようになっていた。セットをつくると絵札と読み札の山に分け、前者をせんべえ布団の上に広げ、後者を妻に手渡す。

 

私は娘の横に並び、散らばった絵札と向き合った。妻が最初の一文字を少し強調しながら、読み札を読み上げる。しばしの沈黙が流れる。

 

ぱちん。

 

娘の腕が伸び、少し大げさに音を鳴らす。彼女が被せた手をのかすと、正解の絵札が顔を出した。すごい。しっかりとカルタができている。

 

その後も私は、娘のリズムに合わせながらカルタに興じた。彼女の表情を眺めているのは面白かった。視線が次々とカルタの上をすべり、口元では最初の文字を繰り返し呟いている。

 

毎回少しだけ彼女が勝つように、私は取る枚数を調整した。全ての絵札が座布団からなくなると、私たちは一枚ずつ取った絵札を並べて数え上げる。自分の枚数が多いとわかり、勝利を告げられると、彼女は毎回同じ仕草で喜んだ。

 

両手を頭の横に持ち上げガッツポーズをし、その体勢のままぴょんぴょんと細かく飛び跳ねる。「やった~かった~」。その可愛らしい仕草が、私にはミーアキャットのようにみえた。

 

どんどんと枚数を増やしていき、今では20枚ほどでも勝負ができるようになった。私は手加減をするが、妻はある程度本気で勝負をする役を担っている。娘はいつか妻に勝てるよう、私という練習相手で修行を積むのであった。

 

いつか『ちはやふる』の広瀬すずみたいになったりして。予習がてら映画が観たくなった。なんにせよ、文字の勉強にもなるし、良い遊びを好きになってくれたものだと嬉しくなった。

 

いつか本気でやっても負ける日が来るかもしれない。そのときを秘かに楽しみにしておこう。