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文学パパが綴るかけがえのない日常

武器よさらば

ヘミングウェイ武器よさらば』を読了した。

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英文学を連続して読んだ反動から、米文学が読みたくなった。真っ先に浮かんだのがヘミングウェイである。彼の著書を読むのは5冊目だ。

 

戦争ものの長編ということで、これまで読むのを躊躇していたのだが、読んでみると恋愛の要素が強く、読みやすかった。その簡潔な文体も相まって、さらさらと一気に読み通せた。

 

ヘミングウェイの文章は、とにかく外面描写に徹し内面をとことん排除した、と言われることが多いが、それは最初期における特徴であり、作品を重ねるごとに変化していっている。

 

今作も初期の終わり頃に書かれた作品であるが、主人公の語りで展開する一人称の物語ということもあって、全く内面描写が描かれないというわけではない。確かにハードボイルドな硬質な文体がメインだが、その端端からは登場人物たちの息づかいを感じることは可能である。

 

今作を読んでヘミングウェイの見方がまた変わった。もちろんいい意味でである。村上春樹フィッツジェラルドを持ち上げる一方、ヘミングウェイには辛辣な評価をしている影響で、私としても一段低く彼を見ていたところがあった。しかし今作を読んで、やはり自分の目で全ての作品を読んでみたいなと思わされた。

 

簡潔な文章だけで、ありありと情景が浮かんでくる。人物たちのセリフも生き生きとしていて、必要最小限の描写だけで伝えたい物語が伝わってくるかのように感じた。すごい名手だ。

 

またタイトルも相変わらずカッコいい。訳者の解説では著名な詩から引用されたものらしい。英語で武器は「Arms」。つまり「腕」という意味もあり、愛する人のたおやかな腕に別れを告げる意味も重ねられている、とのことなのだ。

 

なんてセンス溢れたタイトリングだろう。ヘミングウェイのことが更に好きになった。敬遠していた他の戦争ものの長編もいずれ読んでみよう。また彼の関連書にも手を伸ばしてみたい。

 

ちなみにAmazonプライムで映画版も観れたので視聴した。が、物語の展開やラストが映画向けに変えられており、少しばかり残念に思えた。