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ヘミングウェイで学ぶ英文法

ヘミングウェイで学ぶ英文法』を読了した。

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話題となっていたので、ずっと気になっていた本である。ヘミングウェイの長編を読み、気分が高まったところで満を辞して購入した。

 

前評判に違わず、とても素晴らしい書籍であった。日本語訳、英語の原文、ポイント箇所の解説、文法講義、作品の解説という構成で、計6つのヘミングウェイの短編が収められている。

 

私はこの本を「①英語の勉強」という目的ではなく「②ヘミングウェイ の原文に触れたい」というモチベーションで手に取った。それも良かったのだと思う。おそらくはその割合が1対9から3対7くらいの人にオススメな本ではないか。

 

著者はこれまでにもヘミングウェイについての書籍をだしており精通しているので、解説を読むのも楽しかった。英文法を教える為にヘミングウェイを題材にしている、というより、ヘミングウェイ作品の素晴らしさを解説する上で、英文法の観点から説明をしている印象を受けた。

 

ひとつひとつの解説には、ただただ感銘を受けるばかりであった。日本語訳を読んだだけではヘミングウェイの凄さの全貌はわからないな。そう痛感させられてしまったのであった。

 

名詞につけるaとtheの使い分けでその後の展開や着目点を暗示してみせたり、助動詞のわずかなニュアンスの違いで会話のすれ違いを表現してみせたり、副詞の配置場所により話の流れを整え情景をスムーズに展開させたり、と言われなければわからない細かな配慮で溢れている。

 

ヘミングウェイは極限までに言葉を削ぎ落としたシンプルな文体が特徴であり、それは和訳を読んでいても感じ取れるのだが、少ない言葉数で物語を過不足なく語ることができているのは、このような文法的技術を駆使しているからなのだと、この本を読んで知ることができた。

 

やはり言葉の使いこなしが最高級に上手かったからこそ、偉大なる作家と崇められているのだ。

 

それにしても、海外文学を精読し、その小説の真意に迫り、作品に対する理解を深めるという上で、なんとも素晴らしい書籍であろうか。さっそく続編も購入した。楽しみながら英語も学べるので、私にとってこれ以上ない一石二鳥だ。