いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

ちょうちょ捕り

リベンジは早いに越したことはない。

 

天気がよかったので、娘を幼稚園に迎えに行くと、その足で皆で緑地公園へと出掛けた。

 

やはりこの前休日に来た際よりも人が少ない。日陰を見つけて芝生の上にシートを敷いた。虫かごと虫取り網を持って娘と太陽の下に飛びだしていく。前回成果があんまりだった虫取りのリベンジである。

 

とはいうものの既に幸先は良かった。自転車での移動中に妻が2匹の蝶を捕まえていたからだ。娘が誤ってかごを開け逃がしてしまっていたが、今日は捕まえられるという良い感触を最初から掴めていた。

 

その感触はすぐに確信に変わる。さっそく近くの花壇で、オレンジのカバマダラを捕まえられたのだ。私はその前段でかごに移す際に一匹逃がしていたので、注意深く作業を行った。無事に蓋を閉め娘にかごを渡す。初めての大物に娘は目を輝かせていた。

 

娘は「つぎはわたしがとる!」と言って、虫網を掴んで駆けだしていった。伸縮可能な虫網だったので、蝶を見つけてから伸ばせばいいよと私は言うのだが、娘は頑として伸ばしたまま網を持ちたがり、そうじゃないと好機を逃すのだと主張していた。

 

そんな娘の前を鮮やかなキチョウが横切った。娘は網を頭上に掲げ、一目散に追いかける。そんなドタバタ追いかけたら逃げられるよ、と声をかけるも、娘は目の前のキチョウにしか意識がいっていない。

 

縦横無尽に飛び回るキチョウを、娘は愚直に追いかけ続けた。たまにタンポポで羽休めをするのだが、娘の網は空を切る。何度かの空振りを経て、キチョウは柵で囲まれた池の方へと行ってしまった。

 

娘は芝生に座り込み、息を弾ませ悔しがる。私は忍び足で近寄り、花に止まったところに網を振ることを教えた。私に倣って忍び足を練習する娘。すると、先ほどのキチョウが舞い戻ってきたのである。

 

ふたたび娘とキチョウのチェイスが再開される。そして、ついにその瞬間が訪れる。娘がしゃがみこみ、そっと被せた網の中に、羽ばたくキチョウがしっかりと収まったのである。

 

私はその網を娘から引き継ぎ、慎重にキチョウをかごへと移した。「やった、わたしひとりで、つかまえられた!」娘は興奮してかごの中のキチョウを見つめて叫ぶ。「ママに見せに行こう」。私の言葉に頷いた娘は、かごをもって勢いよく駆けていった。

 

その後も娘は好調で、いくつもの蝶を自分で捕まえられた。妻が見つけたアオスジアゲハを捕捉し、小さなシジミチョウを立て続けにゲットした。もはや見つけた蝶は何でも捕まえられると自信をもった娘は、蝶はどこだと網で風を切って闊歩していた。

 

しかし陽が落ちるのに伴い、どんどんと蝶が姿を見せなくなっていった。娘も幼稚園後の虫取りで疲れが見え始めたので、私たちも帰宅することにした。

 

最後はかごを開け、捕まえた蝶を逃がしてあげた。一匹の蝶は羽を開く前に娘の指に止まり、しばし娘と見つめ合った後に大空へと羽ばたいていった。

 

夕暮れにひらめく蝶の姿は優美だった。またそれを見つめる娘の後ろ姿も、とても絵になり私の胸に残った。娘の中にも何かが残ってくれたら嬉しいな。