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誰がために鐘は鳴る

ヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』読了。

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ヘミングウェイの名の知れた大作。戦争ものは苦手だったが、前回読んだ『武器よさらば』が存外に面白かったので、今作も期待して読んだ。

 

結論から言えば面白かったが、期待したほどではなかった。主人公が敵地で橋を爆破する、その四日間のみを描いた作品だが、綿密な描写や挿話が適宜入れられ、多少冗長に感じる箇所がなくもなかった。

 

またクライマックスの戦闘シーンでは、物語のピークが来なければならないはずなのだが、読んでいてなかなかテンポが上がらず、のめり込むように体重を乗せた読み方、というものができなかった。

 

おそらく私が戦争体験もなく、戦争関連のものをできるだけ避けて生きてきたから、という原因もあるのだろう。戦争ものに精通している人が読めば、その丹念な描写に感服するのかもしれない。

 

ただそれでもヘミングウェイ。そんな相性の悪い私にも、最後まで読み通させる文章と物語が書けるのだった。無駄のない文章は読みやすく、主人公たちの行く末には結末まで興味が削がれなかった。

 

ヘミングウェイは内面描写を排したソリッドな文体、と語られることが多いが、今作でも内面描写は多く取り入れられており、そのような特徴は薄く感じた。先の特徴は初期の作品、特に短編における彼の特徴なので、やはり色んな作品を読んでみなければその作者のことはわからないな、と再確認した。

 

また今作は映画化もされており、Amazonプライムで観れたので、読み終わってから鑑賞した。なかなか原作の再現度が高く、小説が好きな人は楽しく観られる映像作品ではないかと思った。

 

ヘミングウェイ作品は、代表的なものはこれで大方読み終わった。あとは他作品の新訳がでるようならば、そのたび手に取り読んでみたいと思っている。