いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

手術入院

見知らぬ、天井。


投薬された鎮静剤のせいか、まだ少し頭がぼんやりとしている。だけど今自分がどこにいるかについては流石に見失っていない。ここは病院のベッドだ。


右側の手すりにつけられたリモコンを操作し、上半身をベッドごと起こす。こんなに便利なベッドの上なら、もうしばらくここで生活をしてもいいな、という能天気な考えも浮かんだが、長期入院されている方の前では冗談でもそんなことは口にできない。


私が今夜寝泊まりする病室は四人部屋であった。すべてL字型のカーテンが閉められてあり、それぞれのプライバシーが確保されている。残りの三人の姿は見られないが、看護婦さんとの会話声から推察するに、他の三人はなかなかのご高齢であるようだ。


冷静に考えてみれば私が場違いなのである。こんな若い年齢で入院している人の方が少数派なのは明らかであろう。とはいえ、カーテンの仕切りもあるし、新しい病院ゆえにベッド周りは清潔だしで、思っていたよりも快適な一夜が過ごせそうである。


看護師さんも親切な方が多い。年下の若い女性と接する機会があまりないゆえ、ろくに目も合わせられずに内心ドギマギしているのだが、そんな私にも笑顔を絶やさず接してくれる彼女らをみていると、本当に大変な仕事だなと頭が下がる思いを抱いた。


同室の患者さん達も彼女らとの会話を楽しんでいるように感じられた。辛気臭さが沈殿する病室という空間において、いかに彼女らの明るさが、癒やしをもたらしてくれているのかを改めて実感していた。


また、今日は朝から下剤を飲み、夕方に手術を行ったので、初めて食事を口にできたのは夕食の時間であった。味噌汁とご飯と肉豆腐。それにオクラの和え物とバナナであった。出来たてということもありとても美味しく頂いた。それでも唯一避けて残したグリンピースは、本当に嫌いなんだと再確認した。


夜の消灯は十時。正直、今日は一日中寝ていたようなものなので眠くはないのだが、ルームメイトたちに迷惑をかけられないので早いとこ就寝しよう。


ちなみに、術後の出血の有無を確認してもらうため、お通じがでるたびトイレに看護師さんを呼んで観便してもらわねばならない。それが恥ずかしくて堪らない。こんなときに限って、男性の看護師さんがきてくれればいいのになと思うのだが、残念ながら、未だにその幸運を引き当てられたことはない。