いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

京都に泊まる

お団子頭の娘が鴨川に向かって小石を投げている。

 

水面はキラキラと陽の光を反射させ、流れる川の明朗な音は、都会の喧騒をかき消してくれている。

 

私はベビーカーに座る息子と共に、河原で遊ぶ妻と娘を見下ろしていた。ゆっくりと流れる時間の中にいる。そのことを実感し充足感が押し寄せてくる。

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青二歳だなあ」

 

まだ青々とした紅葉に心の中で意地悪をつぶやく。見上げれば赤々と茂る紅葉の天井。梢から覗く青空と燃えるような紅葉、そして所々に点在する青二歳。絵になる色彩美にうっとりとため息が漏れる。

 

荷物とベビーカーを宿に置いた後は、妻おすすめの東福寺を訪れていた。下調べをせずに訪れた私、想像とは大きく異なる場所であった。もっと寺院じみたところかと思いきや、広大なる紅葉庭園をゆるりと散策できた。実に気持ちの良いところであった。

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東福寺の後はホテル近くの祇園商店街を徘徊した。伊藤久右衛門の店頭で宇治抹茶カプチーノを飲み、妻と娘は抹茶パフェを競い合うように食べていた。どうやら娘が抹茶に目覚めてしまったようだ。

 

人通りの多い商店街から横道に入り、古民家が立ち並ぶ風情あふれる通りを歩いた。マカロン店に立ち寄り、感じの良い小規模書店にも足を踏み入れた。

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ホテルの部屋に入る。ダブルベットが鎮座する和室部屋。思ったとおり、これなら息子も放し飼いにすることができる。去年オープンしたばかりの新築のホテル。清潔感、スマート感に富んでおり、早くも居心地の良さを感じはじめる。

 

夕食は予約もせずにホテルを出たため少し彷徨うはめになったが、最終的にはとても美味しい店に巡り合い、大満足の夕食となった。部屋に戻ってからは、空いているうちに大浴場に向かう。ほぼ貸切の湯船でめいいっぱいに足を伸ばし、久々に歩き回った身体をゆっくりと労っていった。

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妻と娘が大浴場へと行っている間は、息子とふたり部屋で過ごした。息子は動き回れる新たな開拓地を興奮気味に探索している。壁掛けのテレビで音楽を流し、私はベッドに寝そべりスマホを弄った。

 

女性陣が戻れば、美味しいコーヒーを淹れ、彼女らは日中に買ったマカロンを食べるのだろう。騒々しくも愉快な夜になるに違いない。明日も京都での予定が盛りだくさん。秋の夜長もほどほどにせねば。