いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

凧たこ上がれ

糸を掴む指で風を感じていた。

 

木々の葉は凪いでいる。ほぼ風はない。しかし無風であるわけではない。ささやかだが、確実に風はそこに存在する。現に、糸の先についた凧は風を受け、心地良さそうに両翼を広げている。

 

家族で凧上げをしに行った。去年に引き続き、近所の緑地公園でだ。公園自体への人出は多かったが、我々の目指した広場はほとんど貸切状態だった。

 

去年も同時期、同じ場所で凧上げをした。しかしその日は風が強く、凧上げ自体も何十年ぶりくらいだったので、ろくに上昇させることもできなかった。

 

それにくらべ今年はどうだ。風が穏やかな好環境というのもあるが、園内を見渡す限り、私が一番の風使いであった。凧は空高く舞い上がり、私は風の呼吸に合わせて張りつめた糸を巧みに操っていた。

 

私は自身の一年での成長ぶりに、ひとり悦に入っていた。私史上で最も長く糸を伸ばすことができたかと思う。娘も思い切り空を見上げ、凧の高さに驚いてくれていた。

 

ひと休みで、子供たちと木陰に腰を下ろし、地面にドングリで文字を書いた。息子は松ぼっくりが気に入ったようで、見つけるたびに拾い上げ、芝生に向かって投げたり、私に手渡してきたりした。

 

帰りがけのラスト一回、娘が懸命に走ったことで上昇させた凧も空高くで綺麗にはためいた。娘は走りながらにそれを見上げ、「めっちゃたかい!」と息を弾ませ、喜んでいた。

 

今年はもういいかという気分だったが、やっぱり年の頭に凧上げをしにいってよかった。子供たちが喜ぶ年齢のうちは、毎年の恒例にしようではないか。