いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

生のみ生のままで

綿矢りさの『生のみ生のままで』を読了した。

f:id:pto6:20220718175036j:image

賞を取ったことで知り、素敵なタイトルに惹かれていた本作。文庫化を知って手に取り読んでみた。綿矢りさの作品を読むのは久しぶりのことである。

 

結論から言えば少し期待しすぎたかもしれない。それでも綺麗な文章には感じ入るものがあったし、読書体験としては心地よい部類に入るものだった。

 

女性同士の恋愛話は、覚えている限りでは初めて読んだ。現代では同じようなテーマも多いと想像される。とはいえ本作は同性愛である以上に人間ふたりの本気の愛を描いた物語だ、と評されることが多かったのでその意識で読んだのだが、思いっきり同性愛ならではの恋愛ではないかと肩透かしを喰らってしまった。

 

同性の恋愛だからこそ訪れる障害、苦しみ、周囲の人たちの困惑。むしろ同性愛の王道とも言えるストーリーなのではとさえ思った。もちろんだから言って悪いと言いたいわけではなく、変に捻った書評に惑わされてしまったよ、と嘆きたいだけである。

 

あと、恋愛小説なのだからしょうがないのだけれど、恋人同士のセリフが甘ったらしくて少しばかり食傷気味になった。地の文ならまだしも、会話文でそれをやられると、会話を不自然に感じてしまうのだった。そんなこと面と向かって言う?女性同士だからか?と少しだけついていけないところがあった。

 

とはいえ総じて楽しく読めたので良しとしたい。最近はもっぱら小説を読む時間が減ったが、エンタメ系を読むのは尚のこと希少だ。さて、次は何を読もうか。