いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

穏やかな山の朝

水の流れる盛況な声で目を覚ました。

 

雨かとも思ったが、清流が奏でる通常運転の挨拶であった。まだ子供らと友人家族が寝静まるバンガローから、妻とひっそり抜け出すと、薄く靄のかかった寝起き顔の森林たちとのご対面。顔を上げると、緑の上には爽やかな青空とまだらな鱗雲が広がっていた。

 

バルコニーの端まで行き眼下を覗くと、朝日をコーティングしたエメラルドグリーンの川と目が合った。子供たちはぐっすり寝ているし、そのうえのロフトには友人家族もいる。妻と少しだけ、朝の大自然を味わいに辺りを散策することにした。

 

昨夜は時間的に近所の大浴場が使えず、キャンプ場にあるシャワーで体を清めた。水回り施設が清潔で心地よかったのだが、ドライヤーはなかったため、朝の寝癖の仕上がりはなかなかのものだった。

 

それをなんとか手でこね押さえつけ、歯ブラシを咥えながらに妻と川辺へと降りていった。朝7時は流石にまだ誰も泳いでおらず、ありのままの御尊顔を拝むことができた。小魚たちも気持ち良さげに泳いでいた。

f:id:pto6:20220807073832j:image

f:id:pto6:20220807074133j:image

f:id:pto6:20220807074144j:image

何度かバンガローを覗きに帰ったが、子供たちは起きておらず、ゆったりと散歩ができた。バンコニーに戻り妻と一杯ジュースを飲んでいるところに寝ぼけ眼の娘が登場。抱っこしていたが、しばらくすると再び布団へと戻っていった。

 

その後も私はひとりバルコニーのベンチに座り、ときおり川を覗き込んでは、そのたび悦に浸っていた。

 

陽光が山の表面を斜めに照らし、徐々にその範囲が拡大していくさまを穏やかな気持ちで眺めた。太陽と森と水と空気。この世界を構成する要素を改めて再確認させられていた。

 

ふと、足をつたい登ってきた小さな蟻に気がついた。私はそっと摘み上げ、地面の上へと降ろしてあげた。