いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

ねむり

村上春樹の『ねむり』を読了した。

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ドイツ語版のイラストレーションが添えられた作品だ。気にはなっていたが薄さのわりに高価なので自分では買うのは躊躇っていた。しかし図書館であれば気兼ねなく借りられる。

 

この短編自体は大学の頃に読んでいるはずだが、全く筋を覚えていなかった。オリジナルバージョン(眠り)から今回版では表現のバージョンアップが施されているというのだが、それも当然わからなかった。

 

不思議な作品である。明朗な表現でするすると読めるのに、頭に浮かぶ映像はどこか靄がかかっていて、鮮明にはイメージが掴みきれない。

 

最後の結末もいろいろな解釈ができるものになっており、読後にいろんな人の考察を読むのが楽しかった。

 

主人公の主婦が、ある日突然眠れなくなるという物語。原因は結局はっきりしないし、主人公は本当に起きているのか、実は夢の中なのかもわからない。オチにおける描写を、夢からの「目覚め」と捉えるのもあり、眠りから地続きにある「死」と捉えるもありで、私としても読むたび解釈が変わりそうだ。

 

このように読者が様々な解釈をする余地がある物語を「純文学」と呼ぶのだろうと、久々に再確認できた。やっぱり村上春樹好きだなあ。今後も図書館をフル活用して、未読の作品も贅沢に読み尽くしていきたい。