ポール・オースターの『冬の日誌』を読了した。
彼の自伝的エッセイである。人生における冬の季節に差し掛かった今、改めて自身の生い立ちを振り返っている。こちらは肉体に纏わる回想録で、姉妹本の『内面からの報告書』は精神起点での自叙伝となっているようだ。
オースター作品は小説であれば単行本で買ってしまうのだが、エッセイについては文庫化を待つ方針であった。というのも、これまで彼のエッセイ(『孤独の発明』『空腹の技法』『トゥルー・ストーリーズ』)は全て読んできたのだが、小説ほどにのめり込むことが出来なかったからだ。
そんなわけで、本作も文庫化を待っていた作品なのだが、図書館で借りられるので読んでみることにした。
やはり小説ほどの面白さはなかったが、初期に書かれた二作の自叙伝と比べるとだいぶ読みやすい内容になっていた。また単に時系列で記憶を辿るような構成にはしておらず、著者の挑戦的な創意工夫を感じ取ることができた。
また後半においては、人生も残りは穏やかな下り坂だと受け入れている作者の、哀愁が滲みだす。それはとても潔い諦念ではあるのだが、やはり過去への郷愁も感じ取れ、私もこのような歳になったら同じような感情を抱くのだろうなと思わされた。
さて、このまま続けて姉妹本の方も読もうかとも思ったが、小説を読みたい欲も出てきたので別作品を挟もうと思う。ただもう一冊もやはり読むのは楽しみだ。