いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

お馬さんごっこ

四つん這いになって、できるだけ身体を低くする。

 

そんな私に娘がよじ登ってきた。お馬さんごっこをしているのだ。なんとか背中にまたがった娘は、嬉しそうに「きゃはっ」と漏らした。

 

私はゆっくりと身体を起こす。背中の上でぐらぐらと揺れる娘を、前足でさりげなく支えてあげる。「ひひーん!」上半身を起こして後ろ足で立つ演出。娘は落っこちないよう楽しそうに私の服を掴んでいた。

 

ぱっぱか、ぱっぱか、ぱっぱか。

 

たまに大げさに揺らしながらもゆっくりと歩を進め、ソファに座る妻の元まで娘を運んだ。到着すると娘は妻の方に飛び移る。移動の役目を果たした私は、きびすを返して元の位置に戻る。そこで丸くなって目をつむった。

 

「まま、うまさん、ねんねしてるー!」

「そうねぇ、なに食べたいか聞いてみたら?」

 

ママからそう教わると娘は大きく頷き、てくてくと私の方へと近づいてきた。屈んで視線を合わせてくる。

 

「なに、たべたいか?」

 

なぜだかコントにでてくる中国人のようなカタコト語だ。私は娘のおままごとセットを思い浮かべながら、もってきやすい食べ物をチョイスした。

 

「ニンジン、食べたい」

 

娘は勢いよく立ち上がり、自分のキッチンへと走っていく。ガチャガチャと音がして、しばらくすると、お皿にニンジンをのっけた娘が帰ってきた。

 

「はいどーぞ」

 

私は嬉しそうにニンジンにむしゃぶりつく。おいしかったと感想を言い、お礼に「乗る?」と尋ねる。すると娘は元気いっぱいに「のるー!」と応えるのであった。

 

そんなふうに、昨日のお馬さんごっこは何度も繰り返された。朝から雨が降って外には行けなかったので、家の中で遊ぶしかなかったのだ。

 

近くの緑地公園には、本物の馬もいる。いつか乗馬体験もさせてみたいな。ただそのときは、こんなにお利口なお馬さんはいないから、くれぐれも注意しておくれよ。