いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

北極星

私は感情が態度や表情に出やすい。 上司に対しても腹立たしい思いはそのまま出すし、キツいときにはただひたすらキツそうに振る舞ってしまう。 昨夜も家に帰ってから、あまりに「つらいつらい」と言い過ぎて妻に怒られてしまった。今世界中の人達がつらいの…

塔の上にいる気持ち

娘がリビングで音楽に合わせて踊っている。 私は流し台越しにそれを眺め目を細めた。しかしそれだけの薪をくべても胸の中はなかなか暖まってくれない。 壁にかかった時計を眺めた。午後7時。空虚な気持ちに包まれる。また今週も、娘をどこにも連れて行くこと…

ザ・スコット・フィッツジェラルド ・ブック

『ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック』読了。村上春樹の著訳作品だ。彼に最も影響を与えた作家フィッツジェラルドについて書かれたエッセイが8篇と、村上訳による短篇とエッセイが3篇が収録されている。 この本を読んですっかりフィッツジェラルドと…

不要不急

まず妻がいて、娘がいる。そこに皆が不自由なく暮らせる為の仕事があり、本を読み、文章を書く時間がある。 極端なことを言えば、私の人生はそれだけで成立する。つまりはほぼ家の中だけで、賄うことが可能なのだ。 しかしそんなインドア派な私でさえ、休み…

むかしむかし

おはなししようよ、と娘が言った。 灯りを消した寝室のベッドの上でだ。寝る前の遊びをひとしきり終えた後で、さらに寝るのを先延ばしにするために娘がよくとる常套手段だ。 私はいいよと応え、何の話をするかと訊ねた。すると娘はうーんと声をもらした後、…

水底の女

レイモンド・チャンドラー『水底の女』を読了した。これにてチャンドラーの全長篇作品を読み終えたことになる。感無量だ。今作でも、私立探偵フィリップ・マーロウがとにかく格好よくて、心躍らせながら最後のページまで辿り着くことができた。 解説で訳者の…

ロケ分散

コロナ対策としてロケ分散を行うこととなった。 職場でコロナ感染が出て全員が出社不可となることを防ぐため、社会的影響の大きい重要業務に従事するメンバを予め分散配置する。全滅を避ける為の事前対処だ。 そのため昨日は分散先のビルへと現場調査に訪れ…

先回り

久しぶりに家族三人で食卓を囲んでいた。 ヘルプで来てくれていたお義母さんが、昨日九州に帰ったのである。3週間ものあいだ滞在し、妻の代わりに家事等を手伝ってくれていた。本当に感謝しかない。 そんなわけで、昨夜は少し寂しい食卓だったのだが、娘は相…

オラクル・ナイト

ポール・オースター著『オラクル・ナイト』を再読。おそらく読むのはこれで3回目だ。中盤まではところどころの場面を覚えていたが、結末は一切記憶に残っておらず、最後は息を呑むように展開を見守っていた。 この作品には、物語内物語がこれでもかと盛り込…

緑地公園でピクニック

我々は花畑の前にテントを張った。 太陽の日差しは強く、風には草木の溌剌とした匂いが含まれていた。テントの四隅をペグで止め、中に厚めのシートを敷いた。荷物を置き、上着を脱ぐと、娘が勢いよく駆けていった。私も少し遅れてそれを追いかける。 久しぶ…

『100日後に死ぬワニ』を見届けて

中盤までは、正直のところ惰性で見ていた。 しかし死までのカウントダウンが10日を切ったあたりから、結末が気になって仕方なかった。最後の日を迎える朝方には、夢にまでワニの絵が出てきたほどだった。 最終回を見て、じんわりとした感動に包まれた。じっ…

別れの季節

3月は別れの季節だ。 昨日も2人の同期から退職の知らせを受けた。昨日が最終出社日で、月末までは年休消化をするとのことだ。 そのうち1人は、前々から転職の噂を聞いていたので今さら驚かなかったが、もう1人の方はとても驚いた。思わず電話をし、最後に少…

おとうさん

最近ここぞとばかりに娘が使う台詞がある。 「おとうさん・・・ごめんなさい」 彼女はこの台詞を吐くとき、肩をすくめ、うつむき気味になってとても“しおらしい”素振りを見せる。しかし目線だけはチラチラとこちらを窺っており、口元にも抑えきれない様子の…

パパにだけ

ベッドで遊ぶ際、娘は私の身体に飛び乗ってくる。 それだけでなく、じゃれ合いながら勢いのあるパンチやキックを浴びせてくるのだった。多少手加減はあるものの、しっかりと“痛い”攻撃だ。昨夜は思わず娘を止め、なんでそんな乱暴をするのかと聞いてみた。 …

スレてない子

先日お義母さんが娘のことをこう表現したらしい。 「スレてない子」。お義母さんは長年保育士として働いており(現在もだ)、娘と同じ年齢の子をたくさん見てきた。また、近所に住む兄夫婦にも三兄弟がいるため、普段から小さな子供と接する機会にも恵まれて…

さらさら髪

娘の髪にドライヤーをかけるのはたいてい私の仕事だ。 お風呂上がり、手ぐしで整えながら、できるだけ効率的に髪の毛を乾かしていく。娘の髪はさらさらと綺麗で、触れているだけで心地よい。 ただ、たまに妻が乾かしてあげるときがある。そのときはクシで髪…

おうち焼き肉

寝室を出ると、もわんとした匂いが鼻孔をついた。 リビングに入るとその匂いは更に強くなる。香ばしさと仄かな甘みを含んだ焼けた脂の匂い。そう、昨晩は家の中で焼き肉をしたのだ。 外に出られない分、せめて食事くらいはと少し贅沢をした。妻の援助で九州…

おっきいお友達

「いっしょにあそぼ」と、娘が声をかけた。 相手のふたりが笑う。しかし、すぐに「いいよ」と言ってしゃがみ込み、目線を娘に合わせてくれた。 公園で初対面の人に声をかけ、一緒に遊んでもらうのはもはや娘の恒例行事だ。ただ、昨日娘が声をかけた相手とい…

サンセット・パーク

ポール・オースターの『サンセット・パーク』を読了。先月末に発売されたオースターの新作をさっそく読み終えた。前作より更に進化しており、とても面白かった。 村上春樹、ポール・オースター、カズオ・イシグロ、レイモンド・チャンドラー。この4人が私の…

ファンタジスタ

娘はファンタジスタだなあと、改めて思った。 ファンタジスタとは、独創性に富んだプレーで人々を魅了する選手を称する際に、よく使われている言葉だ。 娘がいると、大人だけでいるときには生まれない、想定不能の面白さが生まれる。彼女の奇想天外な言動に…

AR遊び

ここ数日、娘とSNOWというアプリで遊んでいた。 ひと昔前に話題となったアプリだ。家でできる遊びを探しているうちに思いだし、久しぶりに起動してみた。 カメラに映る映像に、リアルタイムでフィルタ加工することができる。顔が自動で認識されるので、そこ…

わるい子

昨夜は娘がわるい子だった。 妻や私の言うことを聞かず、とにかくわがまま放題に振舞っていた。原因はわかっている。風邪をひいて前日皆から甘やかされたからだ。すぐに元気になったのだが、特別扱いされる心地よさを引きずってしまったようだ。 特に夕飯を…

極北

マーセル・セローの『極北』を読了した。村上春樹が翻訳を手掛けた本として存在は知っていたが、先日文庫化されたので手に取って読んでみた。 初めて読む作家ということで、期待と不安があったのだが、結論からいうと私には合わなかった。というか抱いていた…

仲良し姉妹

金の髪をなびかす少女たちに娘が囲まれている。 昨日のことだ。天気もよかったので午前中から久しぶりに娘を公園に連れてきていた。娘はいつものように、遊んでいる子供たちに友達になろうよともちかける。 そうやって今回仲良くなったのはロシア人の姉妹だ…

いきぐるしい

コホッという乾いた音が聞こえた。 思わずそちらへと視線を走らせる。音の出所はふたつ向こうに座っている老人だった。プリントアウトした小難しそうな文献を読みながら、彼は口に手を当てていた。 不自然にならないよう、ゆっくりとその老人から視線を外す…

命令的疑問文

娘は少しあざとい物言いをする。 「ぱぱ、これやってくれる?」 語尾に?がついているが、そんなものはあってないようなものだ。はなから私に選択権は与えられていない。 娘はお願いをするときには、ほとんどこの口調を使う。疑問文だがほとんど命令であるこ…

【愛読書】大聖堂

レイモンド・カーヴァーの『大聖堂』を再読した。これまでに3回ほど読み返したが、やはり素晴らしい短編集だ。訳者の村上春樹にも、本作は「カーヴァーの最高傑作」だと称されている。 読んでいて感じるのは、小説たちがどれも堂々としているということだ。…

在宅ワークでの仕事復帰

昨日から在宅勤務で仕事復帰した。 めちゃくちゃ疲れた。在宅だからいいリハビリになる、なんて少しでも考えていた自分に、ため息をつきたい。 部屋に閉じこもってもくもくと仕事をするので、息をつく暇がない。職場なら誰かと話したり、フロアを歩いたりし…

妻、退院。

昨日、妻が退院し、家に帰ってきた。 久しぶりの我が家に妻は嬉しそうだった。娘もいつも以上に身を寄せ、胸に顔をうずめ喜びを露わにしていた。 とはいえ、帰宅後は特に何をするでもなく、みんなでのんびりと日中を過ごした。おのおのにゴロンとしてテレビ…

強力な助っ人

我が家のピンチに強力な助っ人がやってきた。 妻の母親が来阪してくれたのである。娘が入院したと職場に伝え、1ヶ月もの休みを取ってくれたらしい。迷惑をかけてしまい申し訳ないが、とても有り難かった。 また妻の経過も順調で、5泊6日の入院を終え、本日無…